ラグビーW杯の熱気は、開幕したトップリーグ(TL)でも冷めることはなかった。

19年W杯日本大会で日本代表8強入りに貢献したSH田中史朗(35=キヤノン)は12日、4季前の光景を思い返していた。この日は2連覇を狙う神戸製鋼との開幕戦。神戸ユニバー記念競技場に集った2万3004人を見て、感慨深げに言った。

「たくさんの人が応援してくれるありがたみが身に染みて、本当に感謝しています。4年間やってきたことが間違いじゃなかった」

15年11月13日、東京・秩父宮ラグビー場。直前のW杯イングランド大会で日本代表は南アフリカから歴史的勝利を挙げ、迎えたTL開幕戦だった。前売り券完売、当日券なし-。だが、パナソニックの一員だった田中の目に飛び込んできたのは、両サイドゴール裏、バックスタンドの両端がガラガラのスタンドだった。

「ラグビーが負けた日です」

悲しさ、悔しさをその一言に込め、協会のチケット販売方法にもの申した。あれから1521日。この日はバックスタンド上段部分が開放され、四方八方からファンの声援が聞こえてきた。関係者は「トップリーグで(上段を)開けた記憶がない」。これこそが、待ち望んでいた光景だった。

全国6会場の合計入場者数は、昨季から3万1730人増の9万2347人。埼玉・熊谷では担当者が「まさにW杯効果。こんな熊谷ラグビー場は見たことがない」とうなり、当日券約300枚も完売した。一方、TLは「チケットの売れ行きはいいが、人気は偏っている」と今後の課題も分析。田中は「僕たちがいいプレーをして、5月まで続けたい」とシーズンを通しての人気継続へ、決意を新たにした。【松本航】