ジュニアを主戦場とする初出場の鍵山優真(16=神奈川・星槎国際高横浜)が、シニアの主要国際大会デビューで衝撃を与えた。自己ベストを6・89点更新する、91・61点で5位発進。ジュニアでは組み込めない4回転トーループを成功させ、シニアを含めても今季11位の高得点となった。元選手でコーチの父正和さん(48)は五輪2大会出場。1月のユース五輪を制した新星が、表彰台を目指す。

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そわそわとした鍵山の表情が、一気に吹っ切れた。得点発表を待つ「キス・アンド・クライ」。91・61点の表示に、思わず拳を握った。「よっしゃ~!」。試合前の自己ベスト、84・72点を一気に跳び越えた90点台。直後の取材エリアでも、喜びを隠せなかった。

「89点ぐらいかなと思いました。80点台と90点台は全然違う。その壁がなかなか乗り越えられなかったので、とてもうれしいです」

大胆に“鬼門”を跳び越えた。昨年12月の全日本選手権は冒頭でトリプルアクセル(3回転半)の回転が抜け、まさかの0点。ジャンプが3本しかないSPで手痛い失敗だった。今回は順番を入れ替え、4回転トーループは3・26点の加点を導く好ジャンプ。続く3回転半成功で勢いづいた。

「4回転に一番自信があった。4回転を最初に跳んで、ちょっと安心感を持たせる。そうするとトリプルアクセルも、いい気持ちで跳べる。変えて良かった」

3日の現地入り後から、新鮮な毎日が続いた。公式練習では初めて羽生と同組。自分の練習そっちのけで「6割ぐらいは見学っていうか…。『すごいな』ってずっと見ていた。ジャンプ、スケーティング…。全部学べました」。そんな16歳が跳ぶ4回転トーループは、羽生から「優真の高さ、軸の強さを見習うことが僕らにもある」と評された。

92年アルベールビル、94年リレハンメル五輪代表の父正和さんからスピードや体の締め方を教わり、昨年3月に初成功した大技。ジュニアのSPでは4回転を入れられない。「技の習得の早さには自信がある」と初々しく笑う得点源を武器に、怖いものはなかった。

「自分はこの試合、守るものがない。本当に思い切って。失敗するなら失敗するし、成功するなら成功する」

現実味を帯びてきた表彰台。攻めきった先に、勲章は見えてくる。【松本航】