2度の4大大会優勝を誇る世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が19年10月の中国オープン(北京)以来、ツアー通算6度目の優勝に王手だ。大坂は、黒人男性銃撃事件への抗議で、いったんは準決勝を棄権すると表明。しかし大会が抗議に賛同し、全試合の1日休止を決めたことで、棄権を撤回し、準決勝でメルテンス(ベルギー)にストレート勝ちした。決勝では、12、13年全豪優勝のアザレンカ(ベラルーシ)と対戦する。対戦成績は、大坂の2勝1敗。

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一連の抗議行動による反響の大きさに、大坂は、試合前日の夜、「胃が痛んで、寝汗をかいた。なかなか眠れなかった」という。そうでなくとも「試合の前夜は寝苦しい」。そこに、違った意味で、「絶対に負けられない」との思いが募った。

そんな重圧は、行動を起こした強烈な意思で振り払う。コートに入場するとき、ウエアの上から、黒人差別に抗議する「Black Lives Matter(黒人の命も大事だ)」とスローガンが書かれたTシャツを着た。言葉とともに描かれた腕と拳は、力強く天に突き上げられていた。

「あまりにも慌ただしかった」というだけに、決して万全な準備はできていなかったはず。前日の27日には「練習もしなかった」という。約6カ月半ぶりの実戦。そして連戦に加え、抗議への表明で、左太ももの裏に違和感がある。試合中も、たたくそぶりを見せ、何度も屈伸した。第2セットはてこずったが、見事にストレートで振り切った。

抗議への発端は、26日の準々決勝に勝った後のことだった。ウィスコンシン州に本拠地があるNBAのバックスが抗議行動として試合をボイコット。プレーオフ3試合が延期になった。そのニュースを見た大坂は、「私も声を上げないといけない」と感じた。その思いが、抗議行動につながった。

5月に、ミネソタ州で黒人男性が白人警官に首を圧迫され死亡した事件があった。それをきっかけに、大坂は「シャイでいることをやめた」と、自身のSNSに抗議の投稿を続けた。恋人でラッパーのYBNコーデとともに、ミネアポリスの抗議集会に参加した。「何も言わないのは賛成しているのと同じ」。納得できない人種差別への抗議は続けていく。