2度の4大大会優勝を誇る世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が、準決勝で痛めた左太もも裏のけがのため決勝を、戦わずに棄権した。

大坂は、黒人男性銃撃事件への抗議で26日に、いったんは準決勝を棄権すると表明した。しかし大会が抗議に賛同し、全試合の1日休止を決めたことで棄権を撤回。28日の準決勝に勝ち、この日、12、13年全豪優勝のアザレンカ(ベラルーシ)と対戦する予定だった。31日開幕の全米オープンでは、1回戦で土居美咲(29)と対戦する。

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大坂が力尽きた。第1試合後に「少し違和感があった。でも半年以上、プレーしてなくて、疲れもあった」のが、左太ももだった。そして、準決勝の第2セットのタイブレークで「とても強い痛みになった」。何とか回復させようとしたが、「一晩たっても無理だった。とても申し訳ない」と、棄権を決断した。

不運だったのは、感染症対策のため、会場にアイスバスがなかったことだ。「いつも、勝ち上がるたびに、試合後、アイスバスにつかってリカバリーをしてきた。それが今回はなかった」ことで、1試合ごとの回復ができずに、疲れがたまったとも考えられる。

しかし、コロナ禍の中、復帰初戦、約6カ月半ぶりの実戦でいきなりの決勝進出だ。抗議行動などもあり「感動的な1週間だった。最高のサポートに感謝したい」。そして、この1週間から学んだことは「多くのことを乗り越えて、とても自信になった」。

すでに全米の1回戦の日程が発表され、大坂は開幕日の31日(日本時間9月1日)のセンターコート夜の部第2試合に入った。この日を入れて、試合まで2日しかない。「(間に合うかは)全く分からない。とにかく時間を最大限に使いたい」。相手は土居美咲で「とても危険な相手。タフな試合になる」と警戒した。

28日(日本時間29日)の準決勝で、コートに入場するとき、ウエアの上から、黒人差別に抗議する「Black Lives Matter(黒人の命も大事だ)」とスローガンが書かれたTシャツを着た。言葉とともに描かれた腕と拳は、力強く天に突き上げられていた。惜しくも決勝で棄権せざるを得なかったが、大坂が今週に見せたテニスや生き様は、全世界の人の心を動かしたことだけは間違いがない。