重量挙げ女子71キロ級で2月のアジアジュニア・ユース選手権(ウズベキスタン)銀メダルの瀬川瑠奈(士別翔雲高2年)が、全日本女子選手権(12月15日開幕、東京)への出場を決めた。北海道勢の高校生出場は94年原田優子(当別高)以来26年ぶり。新型コロナウイルスの影響で同年代世界一を決める11月の世界ユース選手権(ペルー)の出場は消滅したが、将来の五輪を目指し日本一を決める舞台に初挑戦する。
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高校女王の瀬川が日本一を決める舞台にデビューする。北海道勢の高校生では26年ぶり出場となる全日本女子選手権に向けて「自分の力がどれだけ通用するのか。目標は表彰台、メダルを取ることです」。昨年の全国高校女子選手権では出場17人中唯一の1年生ながら、2位にトータル20キロの大差をつけて優勝。世代最強女王が年齢の枠を超えて挑んでいく。
世界での経験がさらなる向上心を生んだ。2月に初出場したアジアジュニア・ユース選手権ではジュニア(15~20歳)とユース(13~17歳)の両部門で準優勝。国際大会初出場で結果を残したが「(今まで)競う相手があまりいなかったけど、向こうに行くと似たような重量で1キロ差で勝ったり負けたりする。相手の重量も気にかけ、少しのミスも許されない」。同世代敵なしの国内では感じない緊張感もあった。優勝した地元ウズベキスタンの選手を見て「体格は同じぐらいでも上半身の筋肉がすごかった」と課題も感じた。
コロナ禍での部活自粛中は自宅で柔軟を徹底し、車庫にはブルーシートと板を敷いて自主練習に励んだ。「固かった股関節が柔らかくなって、深くしゃがめるようになった」と実感。「足だけだったら最後の決めが弱くなる」と課題としていた上半身の力も以前より身に付いた。
幼少期からチアリーディングなどに打ち込み、体幹は一級品。名寄風連中1年のとき、偶然同じ体育館で行われていた重量挙げを見て競技を始めると、翌年には全国中学で優勝した。96年アトランタ五輪日本代表の橘典人・道高体連専門部委員長(48)も「あの下半身は男子よりも強い。パリ五輪は十分狙える位置にいる」と期待をかける。
全日本女子選手権では日本高校記録タイで自己ベストの202キロ(スナッチ90キロ、ジャーク112キロ)を上回る210キロ超えを目標にする。昨年同大会の同階級ではその記録を超えたのは1人のみ。学校の試験を終えた4日から練習を再開する瀬川は「五輪や世界大会で表彰台を目指したい」。思い描く夢への第1歩を踏み出す。【浅水友輝】
◆瀬川瑠奈(せがわ・るな)2003年(平15)11月17日、名寄市生まれ。2歳からチアリーディングを始め、名寄風連中まではトランポリンも並行する。中学1年で重量挙げを始め、全国中学では2年時に63キロ級、3年時に69キロ級で優勝。士別翔雲高1年の全国高校女子選手権で71キロ級優勝。今年8月の北海道選手権では日本高校記録タイのスナッチ90キロ、ジャーク112キロ、トータル202キロを上げた。好きな歌手はGENERATIONSでボーカル片寄涼太のファン。167センチ、69キロ。家族は両親と姉。
◆女子重量挙げの国内事情 87年に第1回女子世界選手権が行われ、国内でも同年、全日本女子選手権が初めて開催された。現行の階級区分で初めて行われた昨年大会は10階級に76人(うち高校生8人)が出場した。98年スタートの全国高校女子選手権は総体とは別に行われていたが、21年からは男子とともに総体種目として行われる。五輪では00年シドニー大会から正式種目となり、女子48キロ級の三宅宏実は12年ロンドン大会で銀メダル、16年リオデジャネイロ大会で銅メダルを獲得している。