日大が関東1位決定戦を制し、大学日本一に王手をかけた。

昨年も下位BIG8で優勝争いした桜美林大に一時は逆転される苦戦。エースQB林大希(4年)が負傷したが前半終了間際に再逆転し、38-14で勝った。甲子園ボウル(12月13日)は3年ぶり35度目の出場で、関西代表の関学大と30回目の対戦となった。17年に27年ぶり日本一から18年に反則問題で出場停止。天から地に落ちたチームが、真の復活を証明する日本一奪回を狙う。両校の対戦は、問題後初めてになる。

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林大は甲子園切符をつかんだ勝利をサイドラインで見守った。最初の決戦に今季は控えていた自らの足で好走した。その代償で負傷し、前半終盤からベンチに下がった。それでも4連勝で第1目標達成に涙は止まらず。「うれし涙100%。みんなを信じていた」。

苦しい試合だった。林大が率いる攻撃が思うように進まない。先制したものの直後にキックオフリターンTDで追いつかれる。再びリードも逆転のTDパスを許した。追い打ちをかけるように林大まで負傷した。

この3年間の苦しみを表すような展開だが、それを乗り越えてきた強さがあった。橋詰監督は「主力がいなくなってエンジンがかかった。逆境で力を出せるまで成長した」。後半はラン攻撃を軸に3TDを奪った。守備も得点は許さなかった。

DL伊東主将は2戦目の開始早々のケガで離脱している。「伊東を甲子園に連れて行く」とチームがまとまった。3TDのRB川上は「林もケガしたが仲間が力を与えてくれた」とランのエースとしてけん引。「あの事件で絶望と仲良くなった。この3年間で強くしてくれた」と言った。

公募で就任した橋詰監督は「ホッとした」と顔が緩んだ。名門で初の監督業だった。「ここまでは義務。フェニックスとしてはスタート地点」と言い切った。甲子園は出るものでなく、勝つものが日大の伝統だ。

くしくも長年のライバルで3年前に勝ち、騒動の一戦の相手と因縁の対決となった。橋詰監督は「関学大は台本のような勝ち方。王者にどこまで食らいつけるか楽しみ」。通算17勝10敗2分け。3年前に最年少MVPとなった林大は「運命。日大フットボールを存分に披露したい」。今季初めて赤を着て、真のフェニックス復活を期す。【河合香】

◆日大フェニックス 1940年(昭15)に創部。55年に関東で初優勝。甲子園ボウルに初出場し、関学大と引き分けで優勝。過去34度目出場で優勝21度は関学大の最多30度に次ぐ。ライスボウルは84年に初出場し、過去4度とも優勝。愛称は50年代に最強を自負した全日大の不死鳥倶楽部が由来で命名。チームカラーは赤。

◆日大の反則問題 18年5月6日に定期戦で関学大と対戦し、DL宮川がラフプレーの反則を3度犯して資格没収=退場となった。社会問題にまで発展し、関東学生連盟は内田監督らを除名など、宮川とチームには18年度公式戦出場停止処分を下した。このため、19年は創部初の下位リーグ(BIG8)に自動降格したが、7戦全勝優勝で20年のTOP8復帰を決めた。