第100回全国高校ラグビー大会は、27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。コロナ禍の影響で無観客開催となり、家族も会場では観戦ができない。日刊スポーツでは「思いよ届け! 特別の冬」と題して開幕まで、西日本の注目校を紹介する。

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夢にまで見た花園-。あの芝生の上に立つことを目指す19歳が、御所実(奈良)にいる。CTB小川翔夢(しょうま、3年)は、他の3年生よりも1つ年上だが、聖地に対する思いは、誰よりも大きい。

ラグビーを始めたのは父正人さんの影響だった。幼稚園から兵庫の伊丹ラグビースクールに所属。徐々にその魅力にのめり込んでいった。高校で強豪の報徳学園(兵庫)に入学も、半年で退学した。御所実のラグビーに魅力を感じ、編入を希望したからだ。「強いチームで、人間教育を重要視している。決して報徳学園が嫌だったわけではない」と理想のチームを追い求め決断した。

再び1年生をやり直すことに、両親は「何を言っているんだ!?」と反対したが、家族会議で必死に気持ちを伝え説得。納得してもらうまで、1カ月近くかかった。最後には正人さんに「翔夢の思っていることは、俺も同じ。3年間やめずにがんばれよ」と背中を押してもらった。現在は親元を離れ、竹田寛行監督(60)の自宅で、選手7人で下宿生活をしている。

昨季11月の奈良予選決勝を前に、膝の前十字靱帯(じんたい)を損傷。花園では主力として期待されていたが、プレーすることはかなわなかった。手術をし、最終学年の今季こそはとリハビリに専念も、6月に同じ箇所を痛め、再びメスを入れた。「手術をしないという考えもあった。でも、将来を見据えてしました。早く、復帰できるようにがんばりたい」とまっすぐ前だけを見据えた。

恩師の竹田監督は本年度で定年退職する。指導は続けるが、部員を下宿させるのはこの冬が最後になる。小川にとってもラストイヤーで、その初戦が昔飛び出した報徳学園(28日)となった。出場できるかはまだわからないが「負けられへん」と気持ちを込めた。

わがままを許してくれた両親には「ありがとうしかない。1年遠回りしても、自分の気持ちを尊重してくれた。ケガを治して、スタメンで出て、チームに貢献したい。両親に見ていてほしい」。家族が花園に来ることができなくても、プレーで気持ちを伝えたい。【南谷竜則】

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◆御所実 1899年(明32)奈良県染色講習所として創立。1924年に御所工業学校へと改称。ラグビー部は47年創部。52年に御所実、58年御所工と改称を繰り返す。07年の御所東高の農業科合併に伴い、同年入学の1年は「御所実」、2、3年は「御所工」。09年4月からは御所実となる。竹田寛行監督は就任32年目。過去4度花園で決勝に進んだが、いずれも準優勝。

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