全国大学ラグビー選手権で初優勝を狙う天理大(関西1位)が、過去16度優勝で2連覇を目指す早大(関東対抗戦2位)に立ち向かう。

11日に東京・国立競技場で行われる決勝へ、10日は都内で非公開調整。早大は先発BK7人中5人が高校日本代表。一方の天理大は花園出場経験のない大阪の公立校、日新高出身のCTB市川敬太、兵庫・甲南高出身のフランカー松岡大和主将(ともに4年)ら“無名の男”たちが、集大成で花を咲かせる。

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努力を証明する舞台が整った。前日の調整を終え、天理大は打倒早大のイメージを作り上げた。新型コロナウイルスの集団感染で、約1カ月の活動休止を余儀なくされた昨夏。結束し、1つずつ壁を乗り越えてきた。CTB市川は誓った。

「今年は日本一しかない。優勝しか見ていません」

経歴が天理大の強みを象徴する。大阪の公立校である日新高時代、高校から自転車で30分の花園に1度も届かなかった。高3の秋は大阪府予選第1地区準決勝で東海大仰星に5-68と完敗。「高2の頃までは『卒業後はラグビーやらん』と思っていた」と振り返る。

道標は先輩だった。日新高から天理大に進み、教育実習に訪れた白井竜馬(28=クボタ)に「天理に来いよ」と背中を押された。無名校からトップリーグへ羽ばたいた身近な人に続いた。部員150人以上の天理大に入学後、花園と縁のない兵庫・甲南高出身の松岡主将の姿を見た。「知らない高校の選手だけど、元気だった」と刺激を受けた。

小松節夫監督(57)のチーム作りに出身校は関係ない。全国的に無名な大産大付高出身のSO松永は、対面が東福岡高時代に優勝経験を持つ吉村。早大は1年から主力のCTB長田、FB河瀬ら先発BK7人中5人が花園決勝の舞台に立った。経験豊富なタレントに前回準決勝は14-52で屈し、市川は「自分の実力不足を心と体で感じた」。スーパーラグビー「サンウルブズ」からフィフィタが持ち帰った練習を参考にし、2人でスピードを強化した。雪辱の思いは強い。

「天理で4年間努力すれば無名校出身でも出られる。とにかく勝ちたいです」

3連覇した同大以来、関西勢36大会ぶりの頂点へ-。心を1つにし、ワセダの壁をぶち破る。【松本航】