ドーピング検査陽性による資格停止を終えて復帰した川崎駿(25=JFE京浜)は、目標の決勝進出に0秒09届かなかった。

9日の準決勝は22秒49で全体8位、同タイムで石黒智基と並んだ。一夜明けて、1対1の直接対決レース(スイムオフ)に臨んだ。

青いスイミングキャップの川崎は、勢いよく飛び込んだ。25メートル付近でわずかにリード。しかしラスト5メートルで並ばれて、タッチ勝負となった。石黒は22秒41、川崎は22秒50。目を細めて電光掲示板を確認すると右手をすっと差し出した。上位8人の決勝進出を決めた石黒と、握手を交わした。川崎は準決勝で敗退した。

川崎は日本競泳界初のドーピング検査陽性者。17年9月にサプリメントの汚染製品(成分表に記載がない禁止物資が混入)が原因で、7カ月の資格停止を受けた。連絡を受けた時の気持ちを「最初はいたずら電話だと思った」という。当時は大学4年生だったが、内定も取り消し。家に引きこもって「もう水泳できないかな」。悩んだ末に大学OBによる駿台クラブで泳ぎ始めた。現在は、社会人スイマー3年目。神奈川県内の倉庫で午前9時から午後5時まで事務仕事に励んでから、水泳に励んでいる。まず50メートル自由形での決勝進出を目標に掲げて「そこからどこまでトップ選手と戦えるか」と話していた。

大好きな水泳をあきらめそうになった失意から、はるか遠くに見える「東京五輪」という光を頼りにして、日々の仕事と水泳をがんばってきた。力及ばず、決勝に届かなかったが、日本選手権で予選、準決勝、スイムオフと3本を泳いだ。川崎のチャレンジは終わった。【益田一弘】