40分間守り抜いた「城」は、残りの40分で崩れた。
トップチャレンジリーグ(トップリーグ2部相当)から進んできた、近鉄の戦いが終わった。
「城を守る。花園は近鉄の城。『FWがしっかりと守りきらないといけない』という気持ちがあった」
ゲーム主将を務めたロックのマイケル・ストーバーク(29)は、そう言った。
新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた、緊急事態宣言の発出初日だった。
無観客か、有観客か-。
前日24日、急きょ無観客とすることでの混乱を避けるため、トップリーグは国や関係自治体への相談を経て、有観客開催を決めた。
「選手も、スタッフもギリギリまで有観客でできるのかを気にしながら、協会のアナウンスを待っていた。5000人上限の中で3900人の方々に来ていただいた。後半途中までは我々のスタイルが出せた」
有水剛志ヘッドコーチ(HC、47)は感謝を込め、次に悔しさをにじませた。
「最後はああいった形になり、ファンの皆様には申し訳なかったと思います」
今季、防御時の合言葉に「キャッスル(城)」を採用した。大阪のシンボルである大阪城をイメージし、練習から苦しい時間帯に「キャッスル!」と声をかけあった。この日は前半16分、WTBジョシュア・ノーラ(24)が先制トライ。19年W杯日本代表プロップ稲垣啓太(30)やWTB福岡堅樹(28)らを擁し、優勝候補に挙げられるパナソニックと互角に渡り合った。
前半を終えて7-7。堅い防御を続け、近鉄の城である花園は守られていた。
だが、後半に入ると風向きが一変した。
4分、SH佐原慧大(25)が自陣ゴール前でキック。そこに相手の19年W杯イングランド代表ロック、ジョージ・クルーズ(31)の長い手が伸びてきた。チャージを受けると、ボールが転がり、NO8ジャック・コーネルセン(26)に勝ち越しトライを献上。「城」の一角が崩れると、後半開始16分で18点を失った。有水HCは顔をしかめた。
「たらればになるが、リードして後半を迎えたかった。ラスト10分までもつれたゲームにして逃げ切る。あるいは(近鉄が)取りきって逆転するイメージをしていた。後半、自分たちが先にスコアできなかった」
創部92年。東大阪の地に根付き、勢いに乗ると止まらないラグビーで愛されてきた。この日指揮を執ったパナソニックの相馬朋和チームコーディネーターからも「昔から近鉄は勢いを持って攻めてくる。予想通り、激しく、エナジーを持ってきた」とたたえられた。
一方、常に国内トップレベルの質を維持し、落ち着きを放ち、相手の隙を的確に突くパナソニックとの差は、後半40分間に表れた。1月に天理大の全国大学選手権初優勝に貢献し、新天地の近鉄でフル出場したCTBシオサイア・フィフィタ(22)は「後半ミスがたくさんあり、コミュニケーションを取れていないところもあった。もっと練習して成長したい」と誓った。
22年1月には、新リーグが開幕する。ストーバークは率直な感想を口にした。
「目標の『トップ8』を達成できず、さびしい。トップレベルに勝つためには、情熱だけでなく、スキルも伴ったラグビーをしないといけない」
続けて現在地を示した。
「タイトな戦いを40分間できた。後半の40分間は保てず、そこで負けた。セットプレー、攻撃、防御…。それぞれの分野で厳しい選択をして、80分間ラグビーできるようになれば、将来『トップ8』の目標は無理なものではない。『近鉄の未来は明るい』という気持ちもあります」
さらに強固な「城」を築き、再び戻ってくる。【松本航】


