日本代表(世界ランキング10位)は、19年ワールドカップ(W杯)で歴史的勝利を挙げたアイルランド代表(同4位)に31-39で敗れた。

前半から日本らしい速いテンポの攻撃を仕掛けて一時はリードする場面もあったが、終盤は過去1勝9敗の宿敵に主導権を握られて8点差で惜敗した。キヤノンの沢木敬介監督(46)は一夜明けた4日、23年W杯フランス大会へ向けた日本の「現在地」を分析した。

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前半の試合の質からいうと「勝てる試合」だった。アイルランドはライオンズに数人選手を取られているが、実力ある選手が多数出ていたし、1・5軍というレベルでもなかった。そういった意味でも勝ちきってほしかった。ただ、1年半以上活動できなかったことを考えるとナイスゲーム。

初先発したSH斎藤、WTBフィフィタら新戦力は素晴らしかった。斎藤はこのレベルを経験すれば順調に成長するだろう。反則を誘発される場面もあったが、19年W杯代表のSH田中のような相手がやられたら嫌なプレーを覚えればもっと伸びる。ポジション争いも激しくなると思うし、良い意味でもっと「悪い選手」になる必要がある。

後半3分にフィフィタのトライにつなげたSO田村のキックパスも絶妙だった。重圧のかかる場面で自分の持っている技術をいかに正確に出せるかが選手の差。経験を重ねて身に付けるものでもあり、ベテランの味が出ていた。

チームの課題は反則数。スタッツ(統計データ)を見ても、終盤が勝負の分かれ目となった。劣勢となった後半の反則数は日本の7(全14)に対し、アイルランドが1(全8)と明らか。テストマッチは最も規律が大事であり、残り15分のテリトリーコントロール(陣地支配)ができていないから反則につながり失点となる。後半のポゼッション(ボール支配率)は39%、テリトリーも31%と支配されていた。スクラムやタックル成功率は良かったが、先発と控えのレベルに差があると感じた。この差をなくすことがチーム力の向上につながる。

欧州遠征では2連敗したが価値ある経験だった。23年W杯に向けて日本が警戒される存在になったことは確か。ただテストマッチは結果が全てで、敵地で結果を残すことが「ティア1」のマインド。世界ランキングの数字だけでは測れないチームになったことは証明されたので、今秋は結果に期待したい。