東京オリンピック(五輪)代表の18歳、芦川うらら(静岡新聞SBS)が、平均台で14・100点の高得点をマークして初優勝を飾った。日本女子の世界一は3人目で最年少、同種目では54年ローマ大会の田中敬子以来、67年ぶりとなった。

村上茉愛(25)は同種目で銅メダル、床運動では金メダルを手にし、現役引退を表明した。女子が1大会で2つの金メダルを獲得したのは初。鉄棒では橋本大輝(20)が銀、内村航平(32)は6位、跳馬では米倉英信(24)が銀メダルとした。

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芦川はワクワクしていた。演技前に他選手の採点の再検討があり、約5分間中断した。以前なら、待ち時間に緊張は増すが、前夜から思い描いていたシーンの事を考えた。「表彰台のイメージをしたら、メダルが近づくわくわく感が大きくなった」。

高揚に幅10センチの平均台の上での演技も、弾んだ。抜群の柔軟性と、軽やかな跳躍で台に吸い付くように次々に技を決めた。着地もピタリ。143センチの小柄な体を最後も弾ませて喜んだ。「良い演技になった」。想像は現実になった。表彰台で金メダルを首に提げた。

4姉妹の末っ子。次女の七瀬さん、三女の実鈴さんが体操をやっていた縁で競技に取り組んだ。小6の時、五輪を目指していた七瀬さんが側弯症(そくわんしょう、背骨が左右に湾曲した状態)で引退することになり、「お姉ちゃんの分まで頑張る」と決めた。夢をかなえた東京五輪では、ミスもあって6位。「いつも通りの演技ができていたらメダルも狙えていたのかな」という気持ちが逆に自信になり、この舞台に臨めていた。

台上のジャンプで下りる時は、意識せずに指先から下りる。衝撃を最小限にし、平衡感覚をつかさどる前庭器官への影響を抑える。幼少期から指導する守屋コーチは「猫のようなイメージ」と説く。少しのふらつきが落下につながる種目で、柔らかく軽やかに舞う。他選手が通し練習は1、2本が常の中、1日10本をかけてきた努力も実らせた。

予選では大きくのけぞりながら踏ん張った。映画「マトリックス」の動きのようで話題になったが、「検索すると出てきて、恥ずかしかった。今日金メダルを取れて、そのマトリックスを消すことができてうれしい」と笑った。24年パリ五輪へ、目指すは脱スペシャリスト。「他の種目も頑張っていきたい」と期す。芦川うららと検索すれば…。今後は、どんどん関連ワードが増えそうだ。【阿部健吾】

◆芦川うらら 2003年(平15)3月8日、富士市生まれ。1歳の時に姉の影響で競技を始め、小2から水鳥体操館に通う。中学から常葉大常葉に入学し、今年3月に高校を卒業。来年から日体大に進学予定。家族は両親と姉3人。「うらら」の由来は姉らがスピッツの「ロビンソン」の「ルララ~♪」の歌詞を「うらら」と聞き間違え、家族が響きを気に入った事から。143センチ。