北京五輪へ激しい代表争いを繰り広げる日本男子500メートルに、また新星が現れた。

松井大和(24=シリウス)が自己記録を0秒2更新する34秒04でW杯初制覇。10月の全日本距離別選手権で初優勝した森重航(21=専大)も自己ベストの34秒091で2位となり、今季2度目の表彰台となった。今季2勝を挙げている新浜立也(25=高崎健康福祉大職)は34秒27で6位。女子500メートルは小平奈緒(35=相沢病院)は37秒07で6位だった。

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日本の男子短距離界は群雄割拠の様相だ。松井は100メートルを9秒59と好タイムで入る。標高1300メートルにあり、空気抵抗の小ささから好記録が出やすい「高速リンク」の特徴を生かし、ぐんぐん加速。そのスピードで最終コーナーを膨らみかけたがなんとかこらえ、初優勝のゴールを滑り抜けた。

タイムを確認すると両手でガッツポーズし、満面の笑み。「めちゃくちゃうれしい。落ち着き、がむしゃらに行かずに自分のやるべきことに集中したら結果に結びついた」と喜んだ。

趣味のギターがリラックスできた背景にある。日大3年時から始め「めっちゃ練習してます」と言い、米国にも「トラベル用ギター」を持参。遠征中の1人部屋で流行の音楽グループ「King Gnu」の楽曲を弾き、心豊かに試合に臨んだ。

20年3月のW杯で3位になって以来の表彰台。若手の森重が急成長してきた状況に「自分もこのままではダメだという気持ちもあった」と自身を鼓舞した。1歳上の新浜にも「強すぎて置いて行かれている。本当にすごいが、食らいついていきたい」と、せめぎ合う男子短距離陣で存在感をアピールした。

最大3枠の500メートル五輪代表。新浜、森重、そしてこの日5位に入った国内最高記録34秒44を持つ村上右磨(28=高堂建設)の3人に割って入ることができるのか。「五輪は意識はしているけど見えているようで、全然見えていない。本当に勝ち上がらなければ出られない。(前半戦W杯の500メートルが)あと3本あるので、そこでアピールしたい」と気を引き締めた。

互いが刺激し合う相乗効果が奏功している男子短距離陣。この日も上位6人にこの4人が入った。98年長野五輪の清水宏保以来、500メートルで24年ぶりの金メダルを狙いに行く素地が整いつつある。【三須一紀】

◆北京五輪代表への道 11、12月のW杯前半4大会と12月の代表選考会(長野)の結果で決まる。W杯の成績により各国・地域に最大男女各9人の代表枠を配分。日本連盟が定めたW杯で平均的に3位以内に入るなどの基準を満たせば、男女各4人までに事実上の内定を与える。残りは12月27~30日の五輪代表選考会の成績で選ぶ。