高木美帆(27=日体大職)にとって自身初となる五輪500メートルの代表が決定した。 500、1000、1500、3000メートル、女子団体追い抜きと5種目で五輪に出場する。5種目出場は92年アルベールビル五輪の橋本聖子以来。大会後、男子7人、女子8人の代表が発表された。湯田淳スピード強化部長は目標メダル数を男女500、女子1000、1500メートル、団体追い抜きなど複数の金を含む7個と設定した。

<青柳徹の目>

美帆はこの4年間で世界選手権オールラウンド部門、スプリント部門の両方を日本勢でただ1人、制した。500メートルに挑戦する意義は大きい。平昌五輪の時よりも技術、体力、精神面の全体的なバランスが良くなった。羽生結弦が「3連覇の権利は自分しかいない」というようなことを言ったが、オールラウンダーとして全種目でメダルを狙えるのも美帆しかいない。

美帆のすごいところは500メートルから3000メートルまで滑走フォームが変わらないところだ。普通、中長距離選手なら500メートルでは力み、短距離系の選手が1500メートルを滑ればペース配分を乱す。500メートルでもメダル争いに食い込むだろう。

それを生み出す要因はたぐいまれなバランス能力だ。片足立ちをする練習で、いくら押されても倒れない。人並み外れたお尻回りと股関節回りの筋肉がそうさせる。中学時代までヒップホップダンスやサッカーを能動的に行っていたことも、その要因だろう。

今回の選考会では30日の1000メートルの出場をあえて見送った。それは3000メートルから中1日で1500メートルがある五輪の日程を見据えてのこと。美帆は既に五輪のシミュレーションに入っている。(88年カルガリー、92年アルベールビル、94年リレハンメル、98年長野五輪代表。日体大総監督)

◆青柳徹(あおやなぎ・とおる)1968年(昭43)4月12日、北海道釧路市生まれ。日体大出身。88年カルガリー五輪1500メートル5位入賞。92年アルベールビル、94年リレハンメル、98年長野と五輪4大会出場。筑波大大学院を経て、現在日体大教授。スケート部総監督。