日本オリンピック委員会(JOC)と味の素が、北京オリンピック(五輪)期間中に日本選手団へ和軽食を提供したサポート施設「JOC G-Road Station(GRS)」の活動報告会が30日、東京・京橋の味の素本社で行われた。

北京オリンピック(五輪)のノルディックスキー複合男子で個人ラージヒル、団体ともに銅メダルを獲得した渡部暁斗(33=北野建設)が登壇。16日間で29回も利用したといい「お気に入りはエネルギー豚汁ですね。汁物で内臓が活発になるので食事をおいしく食べられる」。欧州を転戦し、通常シーズンのように帰国できず北京五輪へ突入した中で「慣れ親しんだ味と同じ時間をGRSで共有できて良かった。よりチームワークが深まって団体戦のメダル獲得にもつながったのかな」と笑顔を見せた。

だし茶漬けも大人気だったそうで、モーグル男子の原大智やスピードスケート男子の森重航もGRSに通い詰めた。渡部はサバをトッピングするスペシャル版を楽しみ「(出身地)長野県の郷土料理なんですよ、サバのみそ汁。故郷を思い出しながら。兄弟ですから(弟の)善斗も一緒に」と振り返った。

コロナ禍の中、北京五輪では閉環(クローズド・ループ)という厳しいバブルの中、制限された生活を強いられた。その中で味の素も柔軟に対応。北京と張家口の2会場に分散もしていた中で「過去大会では生鮮食品を現地で調達していましたが、今回はできない。手配するところから苦労しましたが、段ボール箱にして250箱、計5トン分を全て日本から持ち込みました」と、同社オリンピック・パラリンピック推進室「ビクトリープロジェクト」篠田幸彦グループ長は明かした。

渡部は感謝する。

「一言で『心の支え』になりました。慣れた味で、こんなに心も体もホッとするものなんだと。(厳しい感染症対策もあり)五輪の雰囲気があまりなかったというか、マスクで表情が見えないし、五輪本来の明るさがなくて、ちょっと殺伐としていた大会でした。自分もワールドカップ(W杯)で全く調子が上がらず、金メダルを取る! なんて言いながら、正直、取れる可能性の方が低くて。葛藤を抱え、精神的に弱っていて暗い気持ちになりやすかった中、本当に心を支えてもらいました」

栄養面の好影響はもちろん、心も元気になり、コミュニケーションも取れた。利用者数は延べ2982人で、前回平昌五輪の542人の5倍超に。選手のリピート率に関しては97%に上り、平均利用回数は17回と多くの選手が支えられた。

この手厚いサポートを一因に、TEAM JAPANは冬季五輪史上最多のメダル18個(金3銀6銅9)を獲得。日本選手団の伊東秀仁団長も「一言で『なくてはならない存在』。行けば楽しそうな選手の表情が見られた。GRSのおかげで一丸となれた」と、ありがたみを思い出していた。【木下淳】