先月22日、日本バレーボール協会の新会長に就任した川合俊一氏(59)がこのほど、日刊スポーツのインタビューに応じた。不祥事で前会長が解職した協会の信用を、いかに取り戻すか。トヨタ自動車ビーチバレーボール部のゼネラルマネジャー(GM)を務める中で体感した危機管理の意識。現役引退後のタレント活動も生かして、バレーボールの普及に心血を注いでいく。

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お茶の間で知れ渡る川合会長が、協会内に新たな風を吹かせる。任期は来年6月まで。最大の“ゴール”も定めている。

川合会長(以下川) 暗いと言われているから、明るくしたい。良くないニュースがあって、嫌な雰囲気になっていると思う。

診断書偽造問題で前会長が解職され、後任として再建を期す。就任の打診は3度断ったが、最終的には使命感に突き動かされた。

川 他に誰もいない。火中の栗を拾うようなものだけど、バレーボールやコンプライアンス、いろんな要素に理解がある人…。全然ご理解のない人がやるくらいなら「あ、俺だな」と思った。

組織のトップとして重きを置くのは「信頼回復」。15年7月からトヨタ自動車ビーチバレーボール部のGMも務める。何より危機管理の徹底ぶりに驚かされてきた。自身の性格も「怖がり」。停電時に備えて、自宅に40個の懐中電灯を置くなど、とにかく用心深い。

川 「堅実だね」と思われる組織にならないと、スポンサーも出てこない。トヨタは物事を丁寧に進める。1つのことに「なんで?」と何度も確認して、5回目くらいには本質にたどり着く。あとは情報の共有。トヨタではマネジャーに返信したことも全て共有される。共有されると、ミスが少なくなると教えられてきた。

代表の強化は監督ら現場に一任する。露出をいかに増やせるか-。サッカーのように国際親善試合などの開催に尽力する意向を示しつつ、選手には見た目にも気を使ってもらいたいという。タレントとして活躍してきた川合会長らしさが垣間見える。

川 だらしない格好はダメ。女性や男性、というよりも子どもたちが見ているから。あんな人になりたいと思われるようにならないと。頭に寝癖ついていたりとかしたら、目標の選手になりづらい。かっこつける必要はない。清潔感があればいい。

角刈りやスポーツ刈りがアスリートの主流の中、前髪を垂らして試合に臨み、若い女性の視線を集めた現役時代。当時から「新人類」と呼ばれたが、その先にはファンへの思いがある。【佐藤礼征】

◆川合俊一(かわい・しゅんいち)1963年(昭38)2月3日、新潟県糸魚川市生まれ。中1でバレーボールを始め、日体大時代に全日本代表入り。84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪出場。90年インドアの競技を引退すると、ビーチバレーボール選手に転向。その後はタレントとしても活躍。07年からは日本ビーチバレーボール協会の会長を務めた。22年3月22日付でバレーボール協会の会長に選任された。