テニスで、19日から女子の東レ・パンパシフィックオープンが、10月3日から男子の楽天ジャパンオープンが、ともに有明コロシアムおよび有明テニスの森公園で開幕する。日本テニス界にとって、待望の国際公式戦の国内開催だ。両大会ともに、19年を最後に、新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限で、20、21年大会の開催を中止せざるを得なかった。

両大会ともに3年ぶりの開催となる。しかし、いまだに海外選手の入国は障壁が高く、それをクリアして来日にこぎ着けるのは、主催者に、とてつもない手間と労力が必要とされる。コロナ禍以前と以降では、あまりにも状況は変わった。3年ぶりの開催にこぎ着けた関係者の奮闘ぶりに迫った。

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日本テニス協会の担当者は、わが耳を疑った。海外からのテニス選手は、日本で試合をするためには、日本が発行する査証(ビザ)を取得する必要がある。そのために、日本大使館や領事館に赴く。コロナ禍前なら、在外公館にそのまま行けばいいが、コロナ禍後は、オンラインで行く日の予約が必要になったという。

協会の担当者があっけにとられたのは、例えば、米国ニューヨークにある日本領事館の例だ。4、5月に申請して、公館に行ける予約が取れるのは9月だという。4、5月など、まだ大会に選手がエントリーする期日よりもはるか前で、誰も詳しい予定など立てていない。

テニス選手のビザは、「就業査証」という区分だ。そのビザを申請するためには、33種類ある在留資格の「興業」の認定を受けなくてはならない。担当者によると、この在留資格申請手続きが、「選手が来日するための手続き一丁目一番地」となる。

在留資格は、出入国在留管理庁(入管)の担当で、法務省管轄だ。コロナ禍前には、1週間ほどで認定されていたが、コロナ禍後は、1カ月から6週間ほどかかるという。在留資格が認定され、その分厚い証明書を在外公館に提出し、ビザを申請しなくてはならない。

それも、在留資格の証明書類は、原本でなければいけない。協会の担当者は、6月ごろから、まだ誰が出場するかも分からない中、トップ100の大半の選手の在留資格を申請し、認定された書類を、世界各国に散らばる選手に、国際宅配便で送付した。

そして、初めてビザの申請に移れる。ただ、ビザの取得にも、当初、2週間かかると言われた。現在、すべての国からの日本入国者はビザ取得が必須だ。コロナ禍前には、ビザ免除だった国も例外ではなく、特に、そのような国の在外公館は、ビザ発給の手続きに不慣れで時間がかかることもあるようだ。

何もかも、コロナ禍で、すべての手続きに時間がかかる。在留資格を認定されるのに1カ月。在外公館を訪問する予約が取れるのが3~4カ月後。ビザ申請から発給までが2週間。その間、選手の手元にパスポートはない。

しかし、世界ツアーの転戦は臨機応変で、人の出入りは、予定通りなど行かない。半年以上も前に、来日する選手や期日など、ほとんど決まっていない。さすがに、担当者も「これでは無理。大会はできない」と、開催を諦めかけたという。

日本で国際大会が開催できなくなって3年目。これ以上、世界との関係が途切れると、日本テニス界に致命的な痛手となる。入管は法務省、ビザは外務省。そして、日本テニス協会を担当するのはスポーツ庁で文科相だ。その3省と綿密な連係を取りながら、とにかく厚い壁を少しでもこじ開けようと、担当者は奮闘していた。(続)

◆東レ・パンパシフィックオープンは9月19日から25日まで。楽天ジャパンオープンは10月3日から9日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドでも同時ライブ配信される。