昨季、B2プレーオフ(PO)を勝ち抜き、6季ぶりにB1復帰を果たした仙台89ERSが1、2日、京都ハンナリーズとアウェーで開幕節を戦う。チームを「B1昇格」に導いた藤田弘輝ヘッドコーチ(HC=36)がインタビューに答え、「相手にいやがられるチームになりたい」と語り、「優勝を目指す」と宣言した。【取材・濱本神威】

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B1でもやるべきことは変わらない。藤田HCは昨季を振り返り「B1とB2の差は縮まっていると感じますが、まだ全体的にバスケットの質や選手のタレントが違うと思います」。9月のプレシーズンゲームでは宇都宮、琉球といった強豪と戦い、その違いを実感した。「悪い時間帯が出てくる。単純に力で押され、相手のシュートが入り出したり…。そういう時にバスケットの質が崩れてしまうのが課題」。B2では通用した強度の高いディフェンスを40分間やり通す「仙台89ERSのバスケット」は現時点ではB1の強豪に勝つまでには至らなかった。

では、B1で勝つためにどう戦うのか? 藤田HCは「競技が変わるわけではないし、魔法の戦術も存在しないので、今までやってきたことをどれだけクオリティー高くできるかだと思います」と語った。今季は新加入選手が5人。9月は新しい「仙台89ERSのバスケット」の質を高める1カ月間だった。

プレシーズンゲームは7戦2勝5敗。5敗の中には「東北カップ」でのB3岩手の1敗が含まれる。決して結果を求める時期ではないが「岩手に負けたのはきつかった」。「仙台に勝つぞ」という気持ちを出して戦ってきた岩手に対し「僕らはまだまだどんぐりの背比べなのに“B1感”を出してしまった。全然そんなチームじゃないのに…」。ただ「自分たちらしくないバスケでは負ける」と気づけたのは財産となった。「シーズン中に気づくより今、気づいた方がいい。これをいい負けにしないといけない」。

「開幕までに完璧にできるチームは1つもない」。開幕前には必ずといっていいほどチームの仕上がりを問われるが「答えづらい質問。数値化できるものではないし、シーズン中に積み上げられるものはいくらでもある」。それは昨季B1優勝の宇都宮を見れば明らかだ。開幕前の仙台との試合で56-72と負け、開幕節は群馬に連敗。しかし最後にはB1の頂点に立っていた。「そういうことだと思います。8月2、3週目に外国人が合流して、10月1日に開幕。でも、6週間ではチームは完成しない。開幕してから試合と練習を重ねて、最後にどれだけ良いチームになるかだと思います」。シーズン中に課題を1つ1つ修正し「B1仕様の仙台89ERS」を構築する。そして、シーズンの最後に「『このチーム、いやだな』と思うチームになりたい。どんなに振り切ってもプレッシャーをかけてくるし、どんなに守っても粘り強くオープンシュートを作ろうとするみたいな…」。

目指すはB1の頂点だ。「目標はやはり優勝であるべき。やるからには優勝を目指してやります」。藤田HCがよく口にする「見ている人たちが勇気をもらえるチームになる」にはプロとしての誇りを持って戦うという決意が込められている。「僕らがやっていることは、お客さまからお金をいただいて、試合を見にきてもらって成立します。だから極端に言えば『見にきて良かった』と思ってもらえないとプロとは言えません。見にきたお客さまに何かを感じてもらえるような試合をしないといけないと信じています」。プロとしての誇りを胸に、シーズン60試合を通して仙台の街を盛り上げていく。