スピードスケート女子の18年平昌オリンピック(五輪)500メートル金メダリストで、現役ラストレースの全日本距離別選手権(22日、長野)を優勝で飾った小平奈緒さん(36=相沢病院)が27日、都内ホテルで引退会見を開いた。

4大会に出場し、金メダル1個と銀メダル2個を獲得した五輪については、感謝と複雑な思いを語った。

「スポーツをやる人たちにとって必要なものであってほしい。支える人にとっても、見る人にとっても、いいものであってほしいという願いは持ち続けていきたい」

そう今後も五輪に期待していく一方で「4回出て、確かに成長させてもらった思いがあるので、それを利用されたくないなという思いはあります。純粋に世界を明るくする舞台であってほしいし、世界の人と人をつなげるものであってほしい。自己実現できるチャンスであってほしい。五輪を目指すことは悪いことではないし、支えてくれる人が真摯(しんし)にスポーツと向き合ってくれることをただただ祈っている」と発言。直接、東京五輪の汚職事件に触れたわけではないものの、第一人者として率直な思いを口にした。

札幌市が2030年の冬季五輪招致を目指す中、後押ししていく考えはあるか問われると、ここでも持論を示した。

「私自身は競技と少し距離を置きたい思いがある」と打ち明け「招致に協力してほしいという要望もいただいていますが、競技や五輪というところではなく、純粋なスポーツの楽しさをもう1度、考えてみたい。人生を豊かにするものがスポーツであってほしい、ということが、私がすごく大切にしたいところ。いろいろな問題を耳にすることがありますが、この勢い(引退した流れ)で何かを始めてしまうのではなく、いったん冷静にスポーツの在り方を考え直す必要がある」と終始晴れやかだった会見の中、神妙な表情を見せた場面となった。【木下淳】