22年世界選手権銀メダルの三浦璃来(20)、木原龍一(30)組(木下グループ)が日本勢ペアとしてGPシリーズ初優勝を飾った。ショートプログラム(SP)首位からフリーも138・63点の1位、合計212・02点で完全優勝を果たした。

冒頭のツイストリフト、2回のスロージャンプなどを決めて、最後のリフトまでを滑り抜いた。フィニッシュポーズを作ると、木原はその場にうずくまり、その背中を三浦がさすった。

拠点が隣町。多くの仲間が応援に駆けつけていた。三浦は「たくさんの人がきてくれて、心の底からうれしかった。すごく力になりました」と振り返った。

困難が2人の絆をより深めた。7月、日本でのアイスショーで三浦が左肩を脱臼した。それから2カ月間の治療期間、結成4季目で初めて本格的な練習ができなかった。

三浦は「龍一君がショート、フリープログラムの曲をかけながら1人で滑っているのを見て、すごく悲しく感じてしまった」と思い出す。影響がない右手をつないで、氷上を技をしないで滑るのは週末だけ。それ以外の時間は離れ離れになった。その感情が逆にパートナーへの思いを募らせた。

「私の居場所はここだな」。9月中旬に技に取り組み始め、実感した。木原も「僕たちは2人そろわないと何もできないんだな」と唯一無二の相手に感謝した。

くしくもケガ前に決めていたSP「You’ll Never Walk Alone」を日本語訳すれば「君は1人じゃない」。その歌詞の意味を自分たちに重ねながら今季の初戦を迎えていた。

いまは滑れることが楽しい。フリーは2週間前から練習し始め、通して滑ったのはこの日で5回目だったという。異例の短期間での調整でも完成度を高めていけたのは、これまでの2人の蓄積だっただろう。

日本勢ペアではGP初優勝。木原は「大きな一歩だったと思う。次の世代が挑戦しようと思うし、挑戦すれば取れると示せたと思う。僕より才能持っているペアスケーターがいると思う。挑戦する人が増えたら日本のペアの将来は明るいと思います」と語った。

次戦はNHK杯(11月18日開幕、札幌)に出場する。

(ミシソーガ=阿部健吾)