第2戦スケートカナダで日本ペア初の優勝を果たした三浦璃来(20)木原龍一(30)組(木下グループ)が、ショートプログラム(SP)で世界歴代5位、今季世界最高となる自己ベストの78・25点で首位発進した。3年前にデビューを飾った思い出の大会で、世界トップレベルとなった実力を示した。

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「あなた、1回、落ち着きなさい」。試合に臨む前、あたふたする三浦に、木原が声をかけた。7月に脱臼した左肩を保護するテーピングが準備運動で取れてしまい、時間がない中で焦った。そこにひと言。いつもは「尻に敷かれている」と笑うが、いざという時こそ、築いてきた信頼感の証しだろう。それだけで、心は平静に向かった。

GP初優勝の凱旋(がいせん)試合だった。まして、この会場、大会は19年に2人のデビューを飾った場所。この日、選手紹介でひときわ大きな拍手を受け、最終滑走では演技前から多くの日の丸が振られた。3年間で変わったもの。それは立場も、互いを信じる力もだ。

冒頭の3回転ツイストから、並んでの3回転トーループ、スロー3回転ルッツへ。息の合ったスピン、ステップでも大きな拍手を浴びた。カナダでレベルを落とした要素も最高難度4でそろえ、三浦は「1つの成長だと思う」と誇った。

銅メダルに貢献した北京オリンピック団体戦のSP(74・45点)を3点以上更新し、2位に13点差以上もつけた。3月の世界選手権では銀メダルも獲得した。木原は「結成して3カ月で初の舞台がここでした。その時は正直、こういう成長ができると思ってなかった」と感慨深げに振り返った。

GP2連勝、2季連続のGPファイナル(12月、イタリア・トリノ)進出も懸かるフリーは今日19日。木原は「自信になるし、うれしいですが、ここがゴールではない。きっかけにしてもっと上にいきたい」。3年間の日々には、まだまだ続きがある。【阿部健吾】