日本から出場した三原舞依(23=シスメックス)がGP2連勝、河辺愛菜(18=愛知・中京大中京高)が約1年前のNHK杯以来の表彰台となる3位、故障明けの紀平梨花(20=トヨタ自動車)がジャンプ失敗なしの4位で「幸せ」をかみしめた。【取材・構成=松本航】

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◆三原舞依(フリートップの130・56点。合計204・14点で逆転優勝)

コンディションは万全とはいえななかった。「試練」と表現して立ったリンク。「今日はそういう日なんだ」「そういう日でも(練習で)やってきたんだから」と言い聞かせた。3回転フリップの回転が抜けるミス以降は、大崩れせずに滑りきった。

スピン3つとステップは全て最高のレベル4。最終滑走のヘンドリックス(ベルギー)が演技を終え、ショートプログラム(SP)2位からの逆転優勝が決まった。第4戦英国大会から2週後に今大会、次戦も2週後にイタリアで行われるファイナルに出る。メダリスト会見で、こう言った。

「私も未知の領域。海外に行くことも旅として、自分自身の中ですごく好き。1回1回の機会が、かけがえのないことだと思います。休養をしていたシーズン(19~20年)は、そんなところまで考えられなかった。ありがたいし、幸せなことです。それを自分の心に持って『どんな時もスケートを楽しむ』と思っていたら、きっと元気になれる。自分を強く持って、レベルアップしたいです」

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◆河辺愛菜(フリー2位の130・38点。合計197・41点で3位)

鬼門は序盤に組み込んだ、ルッツ-トーループの連続3回転ジャンプだった。最後に2回転トーループをつける3連続で成功させ「そこを乗り越えられて、自分の気持ちも上がりながら演技ができたと思います」と流れを作った。わずかな回転不足などがありながらも、演技をまとめてガッツポーズで喜びを表現した。

昨季は全日本選手権で3位に入り、代表に選出された北京五輪(オリンピック)、世界選手権で思うような滑りができなかった。拠点を京都から生まれ育った愛知に移し、樋口美穂子コーチに師事。演技後に「練習してきたことが出せて良かったね」とねぎらわれ、満面の笑みで振り返った。

「去年は本当に勢いというか、何も考えずに試合をしていて『(表彰台に)いけちゃった』みたいな感じだった。今年は『ちゃんと自分で頑張って乗れた』『表彰台に乗れた』っていう実感があった。そこはすごくうれしいし、来年も試合(GPシリーズ)に出ることができたら、2戦とも頑張れるように練習をしていきたいです」

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◆紀平梨花(フリー4位の128・36点を記録。合計192・43点でSPの6位から総合4位へ浮上)

午前の公式練習とジャンプの構成を変えた。左足の外側が靴に当たり、その痛みから連続3回転ジャンプの練習が積めなかった。その時点で「(練習で)たくさん跳びたかった。ぶっつけでできるか分からないのに跳ぶっていうのは、してはいけないこと。『絶対に跳べる!』って思えるように」と決断した。

変更部分だったダブルアクセル(2回転半)-1回転オイラー-3回転サルコーの3連続ジャンプを成功。7つのジャンプ全てで加点を得て、今大会から組み込む3回転フリップも成功させた。昨季は北京五輪代表最有力候補に挙げられながら、右足首の疲労骨折で競技会を全休。まだ3回転ルッツを控える状態だが、完成度の高い演技は自信をもたらせてくれた。次戦は12月下旬の全日本選手権(大阪)。かみしめる思いがある。

「毎日毎日、試合のことを考えて前向きに頑張ってきています。本当にこの調子で、こうやって健康で、普通に滑れていることが幸せ。その気持ちを忘れずに、毎日毎日幸せをかみしめながら、全日本選手権に向けて頑張っていきたいと思います。ゆっくりと1歩ずつやるのもいいんですけれど、全日本選手権っていう、すごく大事な舞台。そこに向けて計画的に先生とプランを組んで、集中してやっていきたいと思います」