不屈の魂でコートを駆け抜ける。Wリーグ・アランマーレ秋田は10、11日、秋田県琴丘総合体育館で東京羽田と対戦する。在籍4年目の玉田那奈(26)は、右膝前十字靱帯(じんたい)断裂から復帰し、11月のホームENEOS戦でWリーグ初出場を果たした。チームは現在4連敗中だが、1カ月の中断期間を挟み、挑むホーム戦。持ち味を発揮し、プレーオフ進出を目指すチームに上昇気流をもたらす。

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11月5日、玉田の競技人生に新たな1ページが刻まれた。25点差をつけられ、敗戦濃厚の第4クオーター。小嶋裕二三ヘッドコーチ(55)に名前を呼ばれ、出番が訪れた。「正直、出るとは思っていなかった。名前を呼ばれた時はビックリしました」。上着を脱ぎ、決心してコートに入った。「ボールが来たら攻めよう」。ドライブでインサイドに切れ込みファウルを誘ってフリースローを獲得。2分16秒の復帰戦で、戦う姿をファンに披露した。

19年に日大から加入。新天地での活躍を夢見た同年5月、左膝前十字靱帯を断裂した。手術を経て20年8月に復帰。だが、21年7月22日の練習中に右膝前十字靱帯を断裂。またもや復帰を目指す日々が始まった。

玉田 やっとバスケに慣れてきて、自分の中で調子が上がってきた時に右膝のケガをした。ケガをした日は落ち込みましたけど…。

周囲が支えてくれた。負傷した日は小沢彩佳(27)、児玉楓(24=現山梨サポートスタッフ)と食事し「ブイ(玉田)の分まで頑張る! と言ってくれました」。部屋に置き手紙をしてくれた久岡真歩子さん、古屋有紀さんからは「大丈夫。待っているから」と伝えられた。

玉田 次の日から意外と切り替えられた。「まずはコートに立つまで頑張ろう」という気持ちになりました。昨季は試合に出られないことは分かっていたので、リハビリに専念できた。

奮闘するチームメートの姿に勇気をもらった。21年に左膝前十字靱帯を断裂した小浜菜摘(27)が7月のサマーキャンプに出場。「2人でずっとリハビリをして乗り越えてきたので、試合に出た時は自分のことのようにうれしかった」。だが、小浜は10月に右膝前十字靱帯を損傷。全治8カ月の診断を受けた。

玉田 ナツ(小浜)さんには「ナツさんの分まで頑張るね」とは言っていないですけど…。自分は、2回前十字を切ってもWリーグの試合で活躍できるということを見せたいです。

3日の皇后杯白鴎大(栃木)戦では約15分の出場で6得点。フリースローを5本中4本成功した。「持ち味のドライブでもっと中に切れ込んで点数を取り、その流れでチームがいい方向にいけば」と意気込んだ。

コートネーム「ブイ」の由来は「Victory(勝利)」の頭文字を取り、旭川藤女(現旭川藤星)高(北海道)時代の監督がつけてくれた。チーム加入を機に同じネームをつける選手もいるが玉田は「気に入っていたコートネームだったので、そのままにしました」。勝って喜ぶために今を全力で戦う。【相沢孔志】