バレーボール元女子日本代表のVリーグ2部(V2)リガーレ仙台・佐藤あり紗選手兼監督(33)が23日、仙台市内で記者会見を開き、今季限りでの現役引退とチーム退団を発表した。自身のSNSで20日に発表していたが、あらためて引退と退団の経緯を説明。チームメートについての質問に涙をぬぐう場面もあった。チームは現在、残り9試合で全11チーム中5位。3位までが挑めるファイナルステージ出場に向け、現役最後の力を振り絞り、ファンに雄姿を見せる。

18年のチーム創設から5年。佐藤が杜(もり)の都でユニホームを脱ぐことを決意した。V2初参戦の昨季はサーブレシーブ賞に輝き、今季も10試合に出場。「ケガは全くしていなくて健康です」。レシーブ成功率はリーグ2位と、その技術は健在。だが、昨年から今季限りの引退を決めており「私がプレーでこのチームを引っ張っていかなくても、大丈夫だなと思った」と、チームメートの成長を引退理由のひとつに挙げた。今後は宮城を拠点に競技の普及活動などを行う予定で「宮城県、東北を盛り上げられるようにしていきたい」と力を込めた。

19年、監督の打診を受けた佐藤は、同年9月から選手兼監督に就任。若い選手に負けじと、プレーで引っ張りながら指導者としてもまい進。V2でチームを率いることができる「コーチ3」の資格を取得した。来季も監督としてチームを率いる考えがあったが、V1で戦えるS1ライセンスを認定されたチーム運営側は、佐藤の引退と今季の成績を踏まえ、来季はV1で指揮ができる「コーチ4」の資格を持つ新監督を招く意思を示した。「コーチ4」の取得を目指していた佐藤は運営側との方向性の違いもあり、退団を決意。チームには衝撃が走った。

「『チームから離れてほしくない』と言ってくれる選手がいたり『監督として続けてほしい』と言葉をもらったり…。心配だ、不安だという言葉をチームメートからたくさん言われています」

今季はまだ前半戦を折り返したばかり。28、29日は宮城・富谷市でホーム戦が行われる。「選手としては、今後の残り少ない試合をより多くの方に見てもらいたいという思いはあります。監督と退団に関しては、とても悔しく悲しくもありますが…」と言葉を絞り出した。V・プレミアリーグやオリンピックのコートに立ち、愛する故郷で誕生したチームの礎を築いたリガーレ仙台の“顔”は涙をぬぐった。自身、チームともに少しでも良い方向に進むべく、最後まで悔いなく戦う。【相沢孔志】

◆佐藤あり紗(さとう・ありさ)1989年(平元)7月18日生まれ、仙台市出身。西多賀小-富沢中-古川学園-東北福祉大。12年、日立リヴァーレ入団。13年、女子日本代表初選出。16年、リオデジャネイロ五輪代表として5位。18年5月に日立を退団後、同年8月にリガーレ仙台入団。19年9月から選手兼監督。21-22シーズンはサーブレシーブ賞を受賞。23年1月20日、現役引退と退団を発表。ポジションはリベロ。166センチ。