男子60キロ級の元世界ランキング1位、永山竜樹(27=SBC湘南美容クリニック)が悲願の五輪切符を手にした。24年パリ五輪代表の座を争っていた、前回21年東京五輪金メダルの高藤直寿(30=パーク24)に決勝で一本勝ち。大会後、全日本柔道連盟の強化委員会で代表内定が承認された。

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永山が、ついに尊敬する男を差し切った。東海大の3年先輩、東京五輪王者、高藤との決勝。延長戦に突入後、相手の流血で2度の中断があっても集中を切らさない。「(19年)GS大阪で対戦した時、同じように中断から再開した後、ポイントを取られたので」。油断はない。反対に一本背負い投げを決めた。「無心で何の技をかけたか覚えていないんです」。勝者がパリ切符を得ると確実視されていた中で“ゾーン”に入り、逆転内定をつかんだ。

「やっとここまで来られた。高藤先輩に勝って代表にならないと意味がないと思っていたので良かった」

東京五輪の代表も高藤と争い、決勝で思い出したGS大阪で完敗。夢破れた。以降は国内すら勝てなくなる。「このまま終わっちゃうのかな。いや何か変えなければ」と苦悩し、今年4月から2カ月弱、自費でフランスへ武者修行に出た。

「柔道というより人間として成長したくて」。昨年の世界選手権を制した高藤がリードしていたが、異国で「ほぼほぼ諦めかけていた」気持ちが上向く。帰国後の8月にマスターズ大会で優勝するなど国際大会2連勝で猛追。「苦しい過去を乗り越えて」迎えた4年ぶりの直接対決を制した。

高藤から頭をなでられ「パリ、頑張れよ」と託された。直後の強化委で満場一致の内定。夫人と1歳の長男へ五輪切符を持ち帰る。日本の宿命か、東京大会は世界ランク1位ながら逃したが、舞台に立てば金メダルを取る自信があった。「日本の誇りを持って自分らしい柔道をしたい」。156センチの体を夢の畳で躍動させ、先輩との最軽量級の2連覇を果たす。【木下淳】

◆永山竜樹(ながやま・りゅうじゅ)1996年(平8)4月15日、北海道・美唄市生まれ。4歳で柔道を始める。愛知・大成高-東海大-了徳寺大職-現所属。世界選手権は銅2回。次ぐ格のマスターズ大会は17、19、23年に制した。20年も世界ランク1位だったが、東京五輪は逃した。得意技は背負い投げ。右組み。家族は夫人と昨年8月に誕生の長男。血液型A。