社会人と学生の王者対決から、Xリーグ同士に変わって3季目を迎えた日本一決定戦を、富士通が3連覇した。パナソニックとの3年連続同一カードを16-10で制し、通算では8度目の頂点。利き手の右中指を骨折していたエースQB高木翼(31)がパスで233ヤードを獲得した。MVPにはスペシャルプレーの決勝タッチダウン(TD)パスを通したWRサマジー・グラント(28=米国)が輝いた。

 

【富士通7-0パナソニック】チャンピオン富士通が先制した。第1クオーター(Q)7分18秒、前回MVPのRBトラショーン・ニクソンがTDラン(6点)を決めた。トライフォーポイント(TFP)のキック(1点)も決まって7-0とリードした。

【富士通7-7パナソニック】8大会ぶり5度目の制覇を目指すパナソニックも、今季に懸ける思いを示した。第2Q、DBコックス・ジョシュアのインターセプトで攻撃権を奪うと、副将のRB立川玄明が5分12秒、残り9ヤードからインチまで前進。次のプレーもボールを預けられ、ど真ん中に突っ込んでTDを奪った。TFPも成功。同点に追いつく。

【富士通10-7パナソニック】以降は互いに守備陣が踏ん張り、TDを許さない展開が続いた。その中で第2Q残り7秒で、富士通がK納所幸司のフィールドゴール(FG)成功。3点を追加して10-7で前半を終え、折り返した。

【富士通10-10パナソニック】WANIMAのハーフタイムショーで盛り上がって後半を迎えると、第3Qはパナソニックが先手を取った。11分19秒、K佐伯眞太郎のFGが決まり、再びスコアを振り出しに戻した。

【富士通16-10】第4Qに富士通が勝ち越した。開始53秒、QB高木翼からボールを受けた、RB起用されていたWRサマジー・グラントが意表を突くロングパスを投じる。これがエンドゾーン内のWR木村和喜へ通り、スペシャルプレーが見事はまって21ヤードのTDパスとなった。TFPのキックはパナソニックがブロックした。

追うパナソニックも諦めない。QB荒木優也からTEダックス・レイモンドへの長いパスが通り、大きく前進。敵陣7ヤード地点からの第4ダウン残り5ヤードではギャンブルを選択。しかし、QB荒木が富士通DB林奎佑の高速タックルを浴び、パス失敗で攻撃権を相手に献上した。

早稲田大(早大)OBのパナソニック荒木延祥監督は今季、司令塔のQBを本場米国の選手から荒木と石内卓也の日本人2人体制に変え、再び頂上決戦に舞い戻った。最終シリーズは石内が3連続パス成功で敵陣まで攻め込んだが、勝負の第4ダウンも富士通の好守に阻まれた。LB山岸明生のブリッツを防げずパスを乱され、最後は富士通が残った時間を消化して、試合終了。またも悔しい結果を突きつけられた。

富士通の山本洋ヘッドコーチは「パナソニックさんと、これだけのたくさんのお客さんの中で試合ができて幸せ。皆さんご存じの通り、非常に強いチームですので。その中で数少ないチャンスをものにできた。(決勝のスペシャルには)しっかり準備できたことが、結果につながった。決めてくれた選手をたたえたい」と喜びを語った。

「黄金時代ですね」の声には「いやいやいやいや」と謙虚に「毎年新人が入ってきますから、一からチームづくりをして、また日本一を目指すだけです」と語った。

主将のLB趙翔来は、石川県を中心に甚大な被害が確認されている能登半島地震を念頭に「年始から大変な思いをされている方がいる中、フットボールで勇気や感動を与えられたらと思っていました。最高の試合ができたと思います。また来年も元気を与えられるよう頑張ります」。自身も負傷に苦しんだシーズンの最後、神妙に、しかし率直な笑みをこぼしてV3の快挙を喜んだ。【木下淳】