帝京大(関東対抗戦1位)が3連覇を飾った。雪に加え、雷の影響で前半23分に試合が中断。55分間を経て仕切り直しとなる異例のファイナルで、計4トライを奪い、創部100周年の明治大(同2位)を下した。

「セットプレー、フィジカル。この2つは絶対に負けない」

前日12日、フッカー江良颯主将(4年=大阪桐蔭)は言い切った。7-0で中断後には明大陣内へ侵入し、ラインアウトからモールを形成。前へと押し込むと、最後は言葉通り、江良が右へと持ち出して貴重なトライを奪った。

伝統を引き継ぎ、後輩へと伝えた。江良が高校に入学する前の日本選手権。帝京大に在学中だった、のちの日本代表フッカー坂手淳史(30)が、パナソニック(現埼玉)戦で体を張る姿が記憶に刻まれている。

「『すごすぎる…』というタックルが、坂手さんでした。『相手、トップリーグだよな』と思っちゃうぐらいのタックルでした」

高校2年時に全国高校大会(花園)優勝。進路は明治大と悩んでいた。伝統校に憧れる一方で、高校3年時まで無敗で駆け抜けるイメージができなかった。

「高校2年生で優勝して、帝京の9連覇のすごさを感じました。9連覇をしていた帝京に行けば『何かがある』と思いました」

大阪桐蔭高時代から同学年のフランカー奥井章仁と仲間を引っ張り、同じ大学へ進んだ。ともに帝京大でも主将を志し、昨季終了後に同学年の投票が行われた。奥井とは同数。チームに対するプレゼンテーションを経て、主将に決まった。

1年時から主力だった江良は変わった。行動を第一に、常にチームを俯瞰(ふかん)した。「僕自身、完璧を突き詰めてしまうことがある。その時にどういう声をかけるか。チームとして、いい方向に進んでいる時もある。自分勝手な考え方をすると、チームは壊れる」。就任2季目の相馬朋和監督(46)は「颯はキャプテンの経験がないし、奥井もバイス(副将)の経験がない。そうなることで『新たな2人の姿を見られるかな』と思った。大学スポーツで重要なのは4年生の力。全員が逃げずに向き合って進むには、4年生全員が納得して選んだキャプテンでないといけない」と4年生による選択を信じた。

雪が舞った決勝。凍えるような寒さの中、最後は王者が笑った。【松本航】

帝京大・江良主将「本当に感謝。ここでは言い切れないほどのサポートがあった。1年間、苦楽をともにして歩んできた仲間たち。部員140人という大人数の中でグラウンドに立てない悔しさも…全員がいい思いしたわけではない。それでも、このチームが日本一になるため、犠牲にしてきてくれた。本当に仲間には心から感謝しています。最後まで体がボロボロになっても、みんなの思い、全て強く戦い続ける仲間たち。本当にこのチームが日本一になれてうれしく思います。この悪天候の中で、待ち時間、寒い中で応援してくださり、ありがとうございました」

相馬監督「本当によく頑張りました…(涙で)1年間。(雷の中断もあった中)本当に明治大学さんが素晴らしいパフォーマンスを見せて、その中でも今こうやって仲間のために体を張り続けようとしてくれた。(2度目の3連覇に)このチームだけでなく、関わる全ての人たちがつくってきたものをさらに発展させたい」