驚異のシンデレラガールが誕生した。来年のロンドン五輪出場を決めた近代5種の男女3選手が30日、成田空港に帰国した。アジア選手権5位で、女子初の五輪切符を手にした山中詩乃(20=自衛隊)は競技歴わずか1年7カ月、国際大会3試合目で悲願を達成。馬に乗ったのも今大会が初めてという“素人”ながら、五輪切符をつかんだ。同選手権女子6位の黒須成美(19=フリー)、同男子4位の富井慎一(30=自衛隊)も五輪初出場を決めた。

 誰より自分が驚いていた。成田空港で会見した山中は「こんなに早く五輪に行けるとは」と目を丸くして笑った。それもそのはず。09年10月に競技を始めて1年7カ月。国際大会3試合目、国内を含めても6試合目での快挙は、関係者も「世界でも異例」というほどのスピード。まさに“素人”五輪選手の誕生だった。

 陸上を続けようと自衛隊に入った09年、女子は陸上部に入れないと知り「衝撃でした」。そこで近代5種を勧められた。だが馬が怖くてうまく乗れない。今年2月には落馬して右ひざ裏を強打。国内3試合は「危ない」と馬に乗せてもらえず、国際2大会も予選落ちして馬術は不参加で、今回が初めての乗馬。それが奇跡的にうまくいった。最初の種目のフェンシング最下位(17位)から一気にまくって5位入賞。5枚の五輪切符をつかんだ。「近代5種に出会えて感謝です。日の丸を背負って戦えるのがうれしい」。初々しく喜んだ。【今村健人】

 ◆近代5種

 フェンシング(エペ)水泳(200メートル自由形)馬術(障害飛越)の3種目で得点を争い、4ポイント1秒でタイムに換算。最後の複合(3000メートル走+射撃)で上位順にスタートして順位を競う。男子は1912年ストックホルム五輪から、女子は2000年シドニー五輪から採用された。1カ国・地域から最大2人が出場でき、日本女子は今まで出場したことがなかった。競技人口は才藤浩日本代表監督いわく「男子20人、女子5人」。