生き残りを懸けた戦いが最前列で繰り広げられている。W杯開幕まであと1カ月に迫った20日、ラグビー日本代表の北海道・網走合宿の2日目が行われ、右手甲の骨折から復帰したプロップの具智元(グ・ジウォン、25=ホンダ)が、スクラムなどでアピールした。右プロップは現在、具を含む4人が名を連ねている。29日のW杯登録メンバー発表を前に、短い日数で指揮官からの信頼を取り戻す。

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雨が降りしきる中でのスクラム練習。足元が緩み、足を滑らせる選手がいる中で具は、テーピングを施した右手で相手プロップをつかみ、ぐいっと一押し。何度も押し込み、安定したスクラムを披露。長期離脱していたとは思えない高いパフォーマンスで、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの前でアピールした。「この合宿でメンバーが決まる。試合にもケガで出られなかった。ちょっと焦っている。時間はない」とせっぱ詰まるように言った。

宮崎合宿が行われた7月9日に右手甲を骨折。戦線離脱を余儀なくされ、パシフィック・ネーションズ杯(PNC)も招集されず。そして今合宿で約6週間ぶりに代表に合流した。骨はまだ完全にくっついてはいないが「痛みは取れた」。離脱中は、所属クラブで3対3でのスクラム練習を積み重ねるなど、できる限りの準備をしてきた。

去年のテストマッチは6試合中、出場した5試合全てで先発。指揮官から信頼は得ているが、本人の気持ちに余裕はない。優勝したPNCではバルが全3試合に出場し、安定したスクラムと豊富な運動量、激しいコンタクトでアピールして1歩リード。他にも15年W杯を経験した山下や若手で成長著しい木津ら、右プロップのライバルは多い。「結構厳しい環境だと思う」と自覚している。

合宿も残り8日。具を含む4人で、最大3枠とみられる右プロップのメンバー入りを争う。「まずはスクラムでみせる。後は真面目さで頑張ります」と具。1日も無駄にすることなく、愚直にアピールを続ける。【佐々木隆史】

○…左プロップも、右と同様に最大3枠とみられる代表の座をかけたアピール合戦が続いている。チームの顔である稲垣に続くポジションを、中島、山本、三浦、石原が争う。1歩リードしているのは、縦への強烈な突破力が武器の中島。全体練習には合流しているものの、7月上旬に負傷した右ふくらはぎの回復具合が選出の鍵となりそうだ。万能型の山本、フィールドプレーに定評がある三浦、コミュニケーション能力に優れる石原も、それぞれの強みで桜のジャージーを目指す。