世界に誇る日本のWTBが、初の決勝トーナメント進出を大きくたぐり寄せた。

後半途中出場の福岡堅樹(27=パナソニック)が、同35分にチーム3つ目のトライ。ラストワンプレーで松島幸太朗(26=サントリー)が、ボーナス勝ち点1をもたらす劇的トライで試合を締めた。松島は15年大会の1トライと合わせてW杯通算5トライを記録。トヨタ自動車で活躍したCTB朽木英次を超え、日本の歴代最多となった。

レメキ・ロマノラバ(30=ホンダ)は「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」に輝くなど、快走トリオが大暴れした。

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4万人近い大観衆の声援が、最大の追い風になった。勝利は決定的。だが、4トライ目が目の前に転がり込んできた。スクラムからNO8姫野和樹が持ち出し、出来た密集から流れるようにSH田中史朗がパス。受け取った松島の目の前には、相手が2人。残り5メートル。小さなステップで相手の足を止めた。空いたスペースに全身全霊をかけて体をねじ込み、インゴール左隅に飛び込んだ。トライを告げるホイッスル。歓喜の輪に包まれ、笑みがこぼれた。

仲間を信じた。最後の最後でボールを奪ったFWに、エースとして応えないわけにはいかなかった。開幕のロシア戦で3トライ。続くアイルランド戦では取れなかったが、確実に自信はついていた。「本当にFWの力で生まれたトライ。FWが仕事をやってくれたので、最後はBKとしての仕事をやり切りたかった」。最高の結果で応えた。

途中出場の福岡が3トライ目を奪い、レメキは相手防御を何度も崩して「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」を獲得。福岡は「みんながつないでくれた。最後は走るだけ。みんなに感謝」とありがたがった。日本のWTBが世界相手に大暴れ。「あいつにはどうにかしてくれる安心感がある。マツなら取れると分かっていた」。日本の最速WTBも、松島の決定力を信頼しきっている。

松島はW杯通算5トライを記録し、日本最多を更新した。歴史的トライで、チーム初の決勝トーナメント進出に大きく貢献。次戦のスコットランド戦に勝てば、まだ試合は続く。優先すべきなのはチームの勝利というのは分かっているが、自分が勢いに乗っているのも分かっている。「この先もWTBとして一番トライを取りたい。もっと取ります」。日本のエースが、世界へ羽ばたく。【佐々木隆史】