ラグビージャーナリストの村上晃一氏(54)が日本が準々決勝で対戦する南アフリカの警戒選手を「村上‘s ポイント」として5回連載で紹介します。1人目はフッカーのマルコム・マークス(25)です。17年に同国内の最優秀選手に選ばれ、18年のスーパーラグビーでFW選手最多の12トライをあげた「フィジカルモンスター」が、日本の前に立ちはだかります。

マークスの前で孤立したら最後、瞬時に絡まれ、屈強な体を生かした世界トップクラスのジャッカルでボールを奪い取られます。ランも強烈で、勢いに乗るとブルドーザーのように相手を蹴散らしながら前進してきます。私が最初にマークスを認識したのは、16年2月のサンウルブズ対ライオンズ戦。試合途中からピッチに立つと、3人のタックラーをはじき飛ばす突進を見せ、「すごい選手が出てきたな」と感じました。その試合は、わずかな出場時間ながら、3回ボールを持ち、63メートル前進。当時21歳。その半年後に代表デビューを果たし、一気に世界のトップに駆け上がりました。

185センチ、107キロ。魅力はパワーだけではありません。高校までFW第3列でプレーしており、華麗なパスでトライを演出する器用さも彼の武器です。強くて、うまい。間違いなく、現在、世界で3本の指に入るフッカーです。止めるには1人でいかず、日本の武器であるダブルタックルが必須です。そして、攻撃時は孤立せずに、いかに2人目のサポートが早く入れるかが重要です。1次リーグでは本来の活躍はできていませんが、本当の力を見せるのはここから。そんな不気味な雰囲気を感じます。