日本(世界ランク13位)が2大会連続の8強に王手をかけた。過去5勝12敗、7月の前哨戦でも敗れたサモア(同12位)に28-22で勝利。試合当日に副将で先発予定だったSH流大(31)が右ふくらはぎの負傷で欠場となったが、先発SH斎藤直人(26=ともに東京サントリーサンゴリアス)が躍動。NO8姫野和樹主将(29=トヨタ)らを中心に一丸で乗り越えた。

D組2位での1次リーグ通過へ、10月8日にはアルゼンチン(同9位)との最終戦(ナント)。勝利し、自力で次のステージに進む。

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斎藤は試合前、所属する東京SGの先輩でもある流から「勝たせてこいよ」と送り出された。突然の先発だったが「準備はあまり変わらない。動揺はあまりなかった」とぶれない。日本の未来を背負う26歳は、チームの勝利を常に考える。

桐蔭学園2年の秋だった。全国高校大会(花園)の神奈川県予選決勝で慶応に敗れ、10連覇を逃した。前年度は1年生ながら準優勝した花園決勝に途中出場。17歳の斎藤は「むちゃくちゃ悔しい。自分で引っ張って勝ちたい」と決意した。

翌日の月曜日、学校の講義室で新チームの主将選びが行われた。引退する3年生を含めた部員全員の投票。斎藤はそこに自らの名を記した。藤原秀之監督(55)は「自覚というのは大きい。3年生になって伸びた。体が小さい(165センチ)ことも分かっている。真面目すぎるぐらいで、他の人に負けない運動量も自分で身に付けた」と振り返る。

3年時は右から左へとピッチを大きく使うラグビーをけん引し、花園で準優勝。進学した早稲田大でも主将を務め、名門を11季ぶりの大学日本一に導いた。

W杯前の8月、17歳の秋を思い返して言った。

「本来(の性格)なら、自分から主将をやるタイプじゃない。思い出してびっくりしています」

負けず嫌いな男はW杯初先発でも堂々と、その役割を果たした。【松本航】