吉田拓郎の歌う「落陽」を初めて聞いたとき、なんのことを歌っているのか、さっぱり分かりませんでした。私が10歳だった1973年の曲。風来坊の若者が、ばくちで身を持ち崩してしまった老人とのふれあいを描き、そこに時代背景を投影しているのかもしれません。本当のところは今でもよく分かりませんが、全編に流れる感覚は共感できるし、好きな曲で、今でも聞きます。

 その「落陽」を作詞した岡本おさみさんが11月末に亡くなっていたことが分かったという記事が朝日新聞、日刊スポーツなど多数掲載されていました。73歳。

 記事を読めば「旅の宿」「襟裳岬」、さらに時任三郎の「川の流れを抱いて眠りたい」、ネーネーズの「黄金の花」などカラオケで歌う大好きな曲ばかり。こういうのをいわゆる「世界観が好き」というのでしょうか。詞の力というか、文章を書く人間の端くれとして、あこがれてしまいます。

 そんなことを思いながら、つい、今季まで阪神のクローザーとして活躍した呉昇桓投手はどうなるんだろうなと、考えています。

 ギャンブルに関する問題で、阪神が残留交渉を打ち切り、韓国球界復帰も難しい現状といいます。大リーグ挑戦となるかどうか、というところでしょうか。

 このオフ、日本球界は巨人の元選手による野球賭博問題に揺れました。その騒動も収まらないうちのギャンブル騒動が問題になったわけです。

 言うまでもなく野球選手が野球賭博に手を出すことは許されません。違法はもちろん、八百長につながる可能性もあり、裏社会とのつながりが生まれるからです。

 呉昇桓の場合は、基本的にギャンブルが合法なマカオで、野球賭博ではありません。これを読んでいただいている方々の中にもマカオや韓国ソウル、あるいは米国ラスベガスなどのカジノにいった経験を持つ人はいるでしょう。

 ギャンブルの魅力というのは確かにあります。なんともいえず解放される瞬間を感じるとでも言えばいいのでしょうか。だからこそ競馬など合法なものが用意されているのだと思います。常識の範囲でやっていれば、レジャーの一種といえるでしょう。

 呉昇桓の場合も「マカオのカジノで遊んだ」という面だけで言えば、それが悪いことなのかと思いますが、今回はいわゆる「タネ銭」の出どころに、裏社会に関連する人物がいる可能性があるということであり、それが事実なら、これはアウト。お金の持ち出しに関する日本とは違う事情も韓国にはあるようです。

 少なくとも私の知る呉昇桓はいい男でした。取材にはしっかり答えたし、お国柄か、年長者の私には、より深くお辞儀をしてあいさつをしていました。

 罰金なのか何なのか、判断が出ればここはしっかり反省し、もちろん疑われるような交際は絶つべきでしょう。同時にこのまま現役を終えてしまうのは、正直、気の毒なような気もします。大リーグ挑戦か、あるいは…。どこかで投げる姿を見たい気がします。