旭川西のエース稲田嘉起(3年)が、今大会の完封一番乗り。「球速は恥ずかしくて言えない」と照れる究極の軟投派が、スタメンに身長180センチ以上を4人そろえる札幌大谷の大型打線を、緩急巧みに翻弄(ほんろう)した。

 昨夏の地区予選では、延長10回、先輩エースが指をつって降板したため、準備する間もなくマウンドへ。勝ち越し点を許した苦い経験がある。「すごく申し訳なくて。それでも、先輩は『ナイスピッチング』と言ってくれた」。成長を求めて、この冬、どれだけ連続してストライクを投げられるか投手陣で競争し、制球に磨きをかけた。

 打者が狙い球を絞れていないと見るや、カーブやスライダーを大胆に配する小憎らしさ。8安打されたことを感じさせない安定感だった。