第97回全国高校野球選手権大会の組み合わせ抽選会が26日、新潟市内で行われた。注目は春季県大会で準優勝し、優勝候補の一角に挙げられる第2シードの新潟県央工だ。ここ6年、新潟代表は日本文理が4度、新潟明訓が2度と私立勢が独占。新潟県央工が「打倒私立」を胸に、08年以来2度目の甲子園を目指す。

 野球部員が身に包んでいる白いユニホームの背中には「県央魂」の文字が躍っている。甲子園に初出場した08年のチームから採用された「伝統」の練習着だ。当時は部長を務めていた高村俊洋監督(41)は「何事にも屈しない。諦めない」と3文字に込められた思いを明かした。私立勢から7年ぶりの県王座奪還へ、気迫がみなぎっている。

 メンバーはすべて新潟県内の出身。運動能力の高い選手がそろっているわけではないが、厳しい練習で強豪の私立と互角に戦える実力をつけた。冬場のウエートトレーニング、体幹トレーニングでパワーアップ。1000本のティー打撃で打球の飛距離とスピードを上げた。鈴木大成主将(3年)は「昨日よりは今日。今日よりは明日。1日1日、質にもこだわってきた」。開幕が間近に迫っても、向上への意欲は捨てていなかった。

 この鈴木主将が誰よりも「打倒私立」の気持ちを強く持つ。昨秋と今春の県を制して1歩リードしているのが、私立の中越だ。優勝候補筆頭校に主将の鈴木は人一倍、ライバル心を持つ。実は鈴木の父裕二さん(45)が88年夏の甲子園に中越の主将として出場。「自宅で打撃フォームのチェックをしてもらっている」と尊敬する父に並び、恩返しするには優勝しかない。春の県大会決勝は中越に0-4で完敗した。だからこそ、父の母校は越えなければならない壁だ。

 自校グラウンドのスコアボードには春の県大会決勝の1回から9回までのスコアがそのまま張り出してある。優勝を逃した悔しさを忘れないため。順当に勝ち進めば中越とは決勝で激突する。「今度は逆のスコアで勝ちたい」。鈴木主将の言葉は、新潟県央工ナインの思いだった。【涌井幹雄】