両翼93メートル、無人の左翼芝生席で白球が弾んだ。智弁学園の主将で4番、現チームから自身の野球生活で初の遊撃を守る広岡大志(3年)が、5-0とリードした4回表無死一、二塁で今夏1号を放った。巨人、阪神をはじめ複数のプロ球団スカウトがスタンドに陣取る中でアピール弾。巨人山下スカウト部長は「飛ばす力はNO・1の大型内野手。守備の動きもいい」と熱視線を送った。

 夏1号は、チームメートへの御礼弾だった。7月に入っても広岡は打撃の状態が上向かず、好感触が戻ったのは「4日前でした」という。悩む主将を助けたのは、3年生15人のうちで今大会ベンチ入り(20人)から外れた2人、池崎丈貴外野手と服部貴成内野手だった。「2人が中心となって練習の準備などサポートしてくれました。おかげで練習に集中できましたし、感謝しています」。さらに小坂将商監督(37)からのアドバイスもあった。「トップを思いきって深くとってみろと言われ、それから調子が上がってきました」。3安打3打点でチームをけん引し5回コールド勝ち。「チームメート、指導者のみなさんのおかげです」と少し声を詰まらせた。

 1年先輩の巨人・岡本和真から譲られた帽子を着用。ひさしの裏に岡本が書いていた「克己心」の文字の左横に、自ら「氣」の文字を書き加えた。

 次戦は春夏連続甲子園を目指す天理と早くも激突するが「1戦1戦全力でやるという今年のチームの目標を達成したい」と2年連続夏の甲子園へ静かに闘志を燃やした。【宇佐見英治】

 ◆広岡大志(ひろおか・たいし)1997年(平9)4月9日、大阪府生まれ。小、中学校とオール松原ボーイズに所属し、中堅、三塁を守った。智弁学園では主に外野と三塁で、現チームから遊撃。背番号6も初めてつけた。甲子園は14年春夏出場し、春は4番右翼、1番右翼で出場。夏は7番三塁で1本塁打をマークした。183センチ、78キロ。右投げ右打ち。血液型O。