二本松工のエース右腕吉羽あたる(3年)が「スミ1」完封勝利した。3安打12奪三振、自己最速147キロをマークするなど最高のスタートを切った。

 吉羽がわずか1時間27分で試合を終わらせた。1回裏、先頭打者への2球目で146キロをマーク。続く3球目の147キロの直球で、見逃し三振を奪った。「最初から最後まで全力でした」。6回に再び146キロ、9回にも144キロを計測するなど終盤まで球威は衰えず、四死球もゼロ。キレのある直球と90キロから100キロ台の緩いカーブを織り交ぜ自己最多の12三振を奪った。

 この日の投球は、橋本紀彦監督(41)いわく「今までで一番」。昨年までは140キロにも満たない「普通」の投手だったが、この半年で劇的に進化した。きっかけは遠投だった。勧めてくれたのは昨秋指導に訪れたOBで現福島ホープスの左腕野地竜也(25)。週3度ほどキャッチボールの延長で、約90メートルの遠投を続けると「肩が強くなって、球の質が全然違う」。球速は半年で10キロ以上増した。

 もう1つはフォーム。さまざまな投手の研究をして、はまったのが敦賀気比・平沼の投げ方だ。右足を高く引き上げ、平沼よりも力をぐっとためる自己流の“ライアン投法”。この投げ方を身につけた春に144キロをマーク。中1まで3年間「野球の練習よりつらい」という和太鼓のレッスンを受けていたこともあり、リストの強さには自信がある。すべてがかみ合い、最後の夏に才能が開花した。

 次戦は好左腕の星雄太朗(3年)擁する光南とぶつかる。吉羽は「ゼロで抑えます」と自信をみなぎらせた。【高場泉穂】

 ◆吉羽(よしば)あたる 1998年(平10)2月28日、埼玉県北本市生まれ。上川崎小3年から野球を始め、主に外野手。安達中1年冬から投手に転向。二本松工では2年夏からベンチ入り。178センチ、75キロ。右投げ右打ち。家族は両親、弟。特技は和太鼓。