鹿児島大会で今年創立100年目を迎える強豪鹿児島実が薩南工を下し、順調に16強へと駒を進めた。最速145キロのエース橋本拓実投手(3年)が7回3安打無失点と好投。2回戦出水工戦に続き、2試合連続の7回コールド勝ちを収めた。ライバル樟南に並ぶ県内最多タイの18回目の夏の甲子園出場が目標。10年以来5年ぶりの全国に向け、チームの士気は高い。

 台風一過の快晴となった青空の下、鹿児島実のエース橋本が薩南工打線に三塁を踏ませない快投を見せた。最高気温30度。梅雨明けを思わせる炎天下のマウンドで、凡打の山を築いた。

 「直球でどんどん押していこうと思った。今年はOBの方々も甲子園を熱望されているし、負けられないですから」

 昨秋まで直球は120キロ弱。スリークオーター気味だった腕の位置を上げ、2回しかできなかったあご付け腕立て伏せを10回以上できるよう克服。冬場も霜のおりたグラウンドで泥まみれになりながら筋力をつけたことで、なんと最速は145キロにまで伸びた。それまでエースだった有村健太投手(3年)が大会前に負傷し「自分しかいない」と、責任感も増した。

 今夏は高校野球100年のメモリアルイヤーだが、鹿児島実にとっても学校創立100年目を迎える節目。また県内過去最多18度の優勝を誇る樟南が初戦で敗退したため、同17度の鹿児島実はライバルに並ぶチャンスでもあるのだ。

 宮下正一監督(42)も「あんなにリズムよく投げるのは初めてみた」と、覚醒した橋本に目を細めながら「節目の年にOBに喜んでもらえたらうれしいですね」と甲子園を見据えた。目標まであと4勝。強豪を率いる指揮官も、5年ぶりの頂点へと思いをはせた。【福岡吉央】

 ◆鹿児島実 1916年(大5)、私立鹿児島実業中学館として創立。48年から現校名に改称。普通科、文理科、総合学科がある。野球部は18年に創部。甲子園は春は8度出場し96年優勝。夏は17度で74、91年の4強が最高。主なOBに元巨人定岡、巨人杉内、ソフトバンク本多、サッカー元日本代表の遠藤(G大阪)ら。鹿児島市五ケ別府町3591の3。中釜一喜校長。