怪物ルーキーが、一夜で立ち直った。ラグビー・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(48)の長男、早実(西東京)清宮幸太郎内野手(1年)が、2打席連続の適時二塁打で3打点をマーク。7回コールドでの16強入りに貢献した。前日18日の初戦に続いて「3番一塁」で先発出場。鋭い当たりとともに“ビッグマウス”も戻り、復調を感じさせた。

 前日の“反省会”から一転、清宮の表情は最後まで晴れやかだった。観衆約4000人と報道陣20社52人が見守る中、初回から2打席連続の適時二塁打。序盤の大量得点をもたらした16歳は「昨日ぶざまなバッティングをしたので、今日はやってやろうと思っていた。やっと1本出て満足というよりは、安心しました」。初戦のポテンヒットはノーカウントと言わんばかりに、自然と笑みがこぼれた。

 わずか1日で、打撃内容が一変した。「あんなので、すみません」とこぼした前日の試合後は、学校グラウンドに戻って約1時間の打撃練習。「練習試合でホームランを打った時の画像を見ながら、上級生と一緒に本来の形に戻した」と微調整しただけで、4打席とも変化球に体勢を崩すことはなかった。力みが抜けた鋭いスイングと、低く、速い打球も戻り「来た球を振っただけですけど、勝手に逆方向に飛ぶのは調子のいい表れ」とうなずいた。

 量より質にこだわる日々の練習が、高い修正能力を育んだ。清宮は、打撃マシンを相手にバットを振ることはない。3カ所に設けたケージで唯一、投手と対峙(たいじ)する打席の順番を待ち続ける。「最初はマシンでも打ってたんですけど、タイミングがずれたんですよ。やっぱり、人とマシンは違いますから」。常に実戦を想定して生きたボールで感覚を磨いてきたからこそ、すぐに復調の手応えをつかんだ。

 大物感あふれるトークも復活した。前夜行われたプロ野球のオールスターを「ちょっとだけ」テレビ観戦。「(西武の)秋山さんのホームランはビックリしました。逆方向によく飛ばすな、と。話題になるだけはありますね」。同じ左打者で、プロ歴代3位の31試合連続安打をマークした強打者の一撃に刺激を受けた素直な思いを、ちょっぴり“上から目線”で明かした。

 春のデビュー戦から公式戦5試合連続の安打と打点をマークしても、この日の自己採点は「70点くらいですかね。まだ全然です」と厳しい。今日20日は日野との5回戦。3連戦目にも「かかってこいって感じ。ヒットの延長がホームランになればいい。狙える場面では狙いたい」と意気込んだ。最後は報道陣に「明日もよろしくお願いします」と頭を下げた。不敵に笑った清宮が、待望のアーチをかける予感を漂わせた。【鹿野雄太】