第88回選抜高校野球大会(3月20日から12日間、甲子園)に出場する32校の選考会が29日、大阪市内で開かれ、高松商(香川)が20年ぶり26度目の出場を決めた。昨秋の明治神宮大会で優勝した実績があるが、長尾健司監督(45)は挑戦者の立場を強調。1924年の第1回センバツ(選抜中等学校野球大会)で優勝した「レジェンド公立校」は、まず26年ぶりの初戦突破を目指す。

 待ちわびた吉報がようやく届いた。午後3時30分、校長室の電話が鳴った。20年ぶりのセンバツ出場決定。体育館前に整列した選手たちのもとへ中筋校長が現れる。大勢の報道陣からフラッシュを浴びながら、選出の知らせを聞いた主将の米麦(よねばく)圭造内野手(2年)は「たくさんの方が応援してくださるので、感動を与える野球をしたい」と力強く宣言した。

 昨秋の明治神宮大会を制した上での文句なしの選出だ。しかも、同大会は大阪桐蔭や敦賀気比(福井)など私立の強豪を破っての日本一だった。センバツでは追われる立場となる。しかし、長尾監督は挑戦者の姿勢を崩さなかった。「冷静に見て力のあるチームじゃない。私学の強い所がいっぱいありますから。神宮の優勝で丸裸にされているでしょう。先のことを考えず打者1人1人を打ち取っていく」。

 迎える大舞台。志すのは、高松商伝統の守り勝つ野球だ。「全国に通用する攻撃力を掲げて香川の力強さを見せたいが、10年早い(笑い)。1点取るよりゼロを積み重ねること。守りにほころびを見せたら先輩たちも悲しむ」(長尾監督)。米麦主将も「守備からリズムを作れるようになってきた」と、しぶとい野球に手ごたえをつかんでいる。

 昨秋の全国制覇で、選手たちの振る舞いにも変化が出てきた。注目されることで、人との接し方にも成長が見られるという。「こんなに喜んでくれる人たちがいるということが分かったんでしょう」と長尾監督。文武両道の公立校の活躍に沸く地域やOBの存在を感じることで、自覚が芽生えている。

 甲子園での香川県代表は長らく「冬の時代」が続いている。センバツは、高松商が最後に出場した96年から20年間で7校が挑み、6校が初戦敗退。高松商の初戦突破も90年が最後だ。古豪復活にはまず1勝から。地道に白星を積み重ね、春の訪れを告げる。【北村泰彦】

 ◆高松商 1900年(明33)に市立校として創立。生徒数は952人(女子601人)。野球部は1909年創部で部員40人。春25回、夏19回の甲子園出場を誇る古豪。主なOBは水原茂(元巨人監督)島谷金二(元阪急)ロッテ松永昂大ら。所在地は高松市松島町1の18の54。中筋政人校長。