初出場の滋賀学園が桐生第一(群馬)を9-5で破り、甲子園初勝利を挙げた。「ヘリコプター打法」と呼ばれる個性的な打撃フォームの4番馬越大地内野手(3年)が、2死球と“大当たり”。6回の遊撃内野安打ではヘッドスライディングで一塁に飛び込む熱血プレーもあり、勝利を呼び込んだ。

 黒塗りバットを高々と構え、1、2、3、4回…とグルグル回す。右回転。3回のときもある。これが馬越の「ヘリコプター打法」。センバツ初出場、滋賀学園の主砲は超変則フォームで観客の心を奪った。

 「年配の方からでしたが、ホームラン打ってや、と声をかけてもらいました」と馬越は言う。昨年秋の近畿大会滋賀県予選の最中に、タイミングを取る方法として始めた。仲間の間で広まった名が「ヘリコプター打法」。この日は晴れ舞台で四球、死球、死球。バットは回すが、打球を飛ばせない。やっと4打席目の6回に投手の頭上を越す内野安打を記録した。十分セーフだったが、178センチ、90キロの巨体でヘッドスライディング。「(2年生エースの)神村が6回から苦しい投球になってきていたので」と、チームに刺激を与える突進も見せた。

 打法の完成、維持のため3キロのダンベルを回して手首を強化。ゴルフ練習場ではドライバーで280ヤード飛ばした。日本ハム中田を手本にし「バッティングはタイミング」と言い切る。16日の甲子園練習では打撃練習中に投球を左腕に受けたが、球は落下せず左脇腹に挟まる珍事で周囲を笑わせた。

 09年夏に初の甲子園に出場も2安打0封で初戦負け。昨秋は近畿大会決勝で大阪桐蔭に1点差まで詰め寄る準Vと力を付け、この日ついに全国で初得点、初勝利を挙げた。山口達也監督(44)は「感慨深い、大きい大きい1勝です」と喜びをかみしめた。自分たちの戦いがテレビで全国中継されたのも初めて。馬越は「画面に大写しで、多くの人に見てもらえたでしょうか。もっとヒットをつなげて人気が出たらうれしいです」と次戦からも全国津々浦々に、ヘリを飛ばす意気込みだ。【宇佐見英治】

 ◆馬越大地(うまごし・だいち)1999年(平11)1月25日、京都市生まれ。小1から野球を始め捕手。朱雀中では京都ファイターズ(現嵯峨野ボーイズ)に所属。滋賀学園では1年秋からベンチ入り。好きな食べ物は焼き肉で、特に塩タンがお気に入り。高校通算15本塁打。50メートル走は6秒7。家族は両親と兄、姉。178センチ、90キロ。胸囲110センチ。右投げ右打ち。

 ◆滋賀県勢の初戦突破 12年近江7-2高崎、15年近江2-0九産大九州に次いで滋賀学園が勝利。センバツで滋賀県勢の出場3大会連続初戦突破は初めて。

 ◆滋賀県勢の2ケタ奪三振 滋賀学園・神村が10奪三振。滋賀県勢の2ケタ奪三振は99年夏に村西哲幸(比叡山)が同じ桐生第一から12個を奪って以来、春夏を通じて17年ぶり。