花咲徳栄(埼玉)のプロ注目左腕、高橋昂也投手(3年)が、圧倒的な力を見せつけて甲子園出場に王手をかけた。準決勝の春日部共栄戦で9回4安打無失点、13奪三振に抑えた。今大会は5試合に登板し計28回を7安打無失点で48三振を奪っており、奪三振率は15・43個を誇る。5回戦では6回参考ながら完全試合、準々決勝は6回を無安打無失点と、完璧に近い投球を続ける。今日27日の決勝は聖望学園と対戦する。ドクターKが聖地への切符を手にするか、注目される。

 たった1本の安打にスタンドがどよめいた。2回裏2死。高橋昂が、6番山崎に中前へクリーンヒットを打たれた。5回戦、準々決勝と無安打に抑えている高橋昂にとって、実に14イニングぶりに浴びる安打だった。ただ、マウンド上の本人は顔色一つ変えなかった。次打者を3球三振に打ち取った。

 6回には1死から左前打と犠打で得点圏に走者を背負った。久々に味わうピンチに、ベンチから岩井隆監督(46)の助言が届いた。「『1点あげるのを嫌がってちゃダメだぞ』という伝令がきて、気持ちが楽になりました」。効果はてきめんで、次の打者を10個目の三振に抑えた。今大会初めて9回を投げ4安打無失点で13三振を奪い、2年連続の決勝進出を決めた。

 「雨の中でも自分の投球ができました。三振は意識していません。チームが勝てばいい。三振よりゼロに抑えることです」。今大会は5試合、28イニングを投げて1点も与えていない。さらに48三振を奪っており、15・43個という奪三振率も光る。5回戦は6回参考ながら完全試合、準々決勝は6回を1四球のみの無安打無失点。相手を圧倒する投球で勝ち進んできた。

 今春の県大会は腰痛で登板を回避し、複数の2年生投手を中心に準優勝した。「後輩の頑張りは刺激になったし、(浦和学院との)決勝で負ける悔しさを味わわせてしまい申し訳ないと思った」。夏に向けて自分を見つめなおし、筋力アップを誓った。上半身は腕立て伏せ、下半身は走り込みとシンプルな練習を繰り返した。夏を迎え、DeNA武居スカウトが「下半身は大きくなりすぎているくらい成長している」と評していたこともあった。入間向陽との4回戦では、自己最速を4キロ回る149キロを出すなど、パワーアップが結果に出ている。

 今日27日の決勝は県内NO・1の打撃力と定評ある聖望学園と戦う。無失点の継続が期待されるが「そこは気にせずチームの勝利を優先したい。今日の試合はなかったことにして、気持ちを入れ直して臨みたいです」。3季連続の甲子園をかけ怪腕を振る。【杉山理紗】

 ◆高橋昂の奪三振率 高橋昂は埼玉大会で28回を投げ48奪三振。奪三振率(9回あたりの個数)は15・3個になる。最近の主な投手の夏の地方大会奪三振率は12年夏の大谷翔平(花巻東3年)が岩手大会で15・2個(18回1/3で31個)、同年松井裕樹(桐光学園2年)が神奈川大会で13・21個(46回1/3で68個)、昨年の小笠原慎之介(東海大相模3年)が神奈川大会で10・00個(27回で30個)。

<高橋昂也(たかはし・こうや)アラカルト>

 ◆生まれ 1998年(平10)9月27日、埼玉・久喜市。

 ◆サイズ、家族構成 181センチ、83キロ。左投げ左打ち。両親と姉。

 ◆野球歴 小3から栗橋ジャイアンツで野球を始める。栗橋東中では久喜シニアに所属。3年春に関東大会出場。花咲徳栄では1年秋からベンチ入り。2年夏にリリーフとして甲子園8強。3年春センバツ出場。

 ◆奪三振 2年秋の埼玉県大会3回戦(対早大本庄)で1試合19奪三振を記録。「練習試合では20個取ったこともある」。

 ◆好きな選手 楽天松井裕。三振で抑えるスタイルに憧れる。

 ◆好きな芸能人 NMB48山本彩(23)。