センバツの21世紀枠で多治見(岐阜)が選出された。春夏通じて初めての甲子園。文武両道を掲げる公立校。練習環境などのハンディをはねのけ、昨秋の岐阜県大会で優勝した実績が買われた。

 佐藤昂気主将(2年)は選出を信じられない様子で「本当に驚きました。喜びを表すものだと思っていたけど。それより、マスコミの人がこんなに来るんだって、そっちの方が…」。サプライズ選出と、30人以上にのぼった報道陣の数に戸惑うばかり。「昨秋はバッテリーに頼っていたので春は楽にさせてあげたい。とりあえず目標は1勝。そこから1勝1勝積み重ねていきたい」と意気込んだ。

 学校に併設されたグラウンドは狭く、野球部の専有は内野だけ。この日もサッカー部のボールが入り込み、野球部員が返す光景が繰り返された。下校時間が厳密に決まっており、平日は午後6時までの2時間しか練習できない。帰宅途中に見える隣の高校では照明をつけてフリー打撃の真っ最中ということもよくある。ただ、朝の練習や、テニスボールでのティー打撃など工夫を凝らした練習で地力をつけてきた。

 昨秋の岐阜県大会でたび重なる接戦を制し初優勝。特に準決勝の益田清風戦は1-5の9回に5点を奪う鮮やかな逆転サヨナラ勝ちだった。東海大会は初戦で、準優勝した至学館(愛知)を相手に1対2と健闘した。

 高木裕一監督(54)は学校からほど近い多治見市役所の職員。午後5時過ぎの退勤後、数十分だけ練習を見守る。隣の土岐市出身で東海大相模でプレーした。OBの紹介で08年から外部監督として指導にあたっている。【柏原誠】