春1勝は遠かった。2年連続2回目出場の札幌第一が、初戦で悪夢の惨敗を喫した。「機動破壊」を掲げる高崎健康福祉大高崎(群馬)に1-11と大敗。3投手が毎回の16安打11失点と崩れ、木更津総合(千葉)に敗れた昨年と同じ3月22日、大会第3日、第3試合1回戦で、春の甲子園から姿を消した。昨年果たせなかった春夏連続出場へ、チームスローガンの「常勝一高」の実現に向け、新たな1歩を踏み出す。

 まさかの10点差で迎えた9回表2死一塁。代打宮井の打球が相手中堅手のグラブに収まると、札幌第一ナインは目力を失い、整列した。「先に動かないといけないところで、全く動けなかった。練習試合ではできていたことが、できなかった。全国レベルとは差があった」。中村主将がうめいた。菊池雄人監督(44)も「完敗です」と言って、唇をかんだ。

 相手の足を恐れたエース冨樫の自滅からゲームが始まった。走者が一塁に出るたび、しつこくけん制を送った。「ランナーを気にして、(ホームに投げる)球が浮いた。実力不足」。2回裏、先頭打者を一塁に出すと5回もけん制。続く打者に2連続二塁打を浴び、3点の先制を許した。3回は連打で二、三塁のピンチを作られるとスクイズを警戒。2連続死球と乱れ、追加点を与えた。

 0-5で迎えた6回表、宮沢遊撃手の右中間適時打で1点を返して取り戻したかに見えた流れを、今度は守備で手放した。7回裏2死一塁、健大高崎の1番今井の放った左前安打を、高階左翼手がファンブル。はじいたボールを拾う間に二、三塁にされた。「最悪の展開」と指揮官。3回途中から6回まで好投を続けていた2番手左腕の前田が、直後に満塁本塁打を浴び、勝負は決した。打っても無安打の主砲高階は「わずかなミスを見逃さないのが甲子園。もっと高いレベルでプレーできるようにしないと」と、敗戦の責任を背負うように言った。

 昨年2-5で敗れた全く同じ日の、同じ時間帯に、今年の挑戦も終わった。昨年を上回る大差。唯一のタイムリーを放った宮沢は「この一打を忘れず、夏につなげたい」と次を見すえた。雨で1日順延したにもかかわらず、この日は再生不良性貧血を乗り越え、復帰を目指す渋谷塁二塁手(3年)ら多くの応援団が三塁側スタンドを埋めた。「みんなに勝ちを見せてやりたかった。夏は必ず勝ちを届けたい」と中村。苦い経験を糧に、今日から夏へ一歩を踏み出す。【中島洋尚】