昨年春夏甲子園4強の秀岳館(熊本)が、自慢の打線を爆発させて圧勝発進した。3回に1点を先制すると5回には3点を追加し、なおも2死満塁から幸地竜弥捕手(3年)が左翼へ満塁本塁打を放って一挙7得点。12安打11得点で悲願の初優勝へ好スタートを切った。

 快音とともに、秀岳館打線を象徴する打球が、左翼席で弾んだ。4-0で迎えた5回2死満塁。幸地が直球を強振すると「これまでで初めて」という満塁本塁打となって勝負を決めた。「とにかく打ってやろうという気持ちでした。最高の気持ちでした」。内気な性格な7番打者が初お立ち台で恥ずかしそうに自分の打席を振り返った。

 昨夏までは遊撃手だったが、新チームから捕手へ転向。「突然でビックリした。できるのかと思った」。軟式だった中学時代から硬式となった高校入学時も「硬球が怖かった」という幸地にとって、捕手は過酷だったが積極的にノックを受けて克服。ワンバウンド捕球の練習も率先して行い、レギュラーを獲得した。打撃面でも自主練習で汗を流しパワーを磨いた。1、2打席目はタイミングが合わなかったが「右足に体重を残して前につっこまないようにしました」。満塁アーチは偶然の産物ではなかった。沖縄から熊本・八代の秀岳館へ越境入学し「最初はホームシックで帰りたいと思った」という口数少ないシャイな男がビッグな仕事をしてみせた。

 鍛治舎巧監督(65)も目を丸くした。「幸地は希望の星ですが想定外でした。あそこは右へ打ての指示でしたのでベンチに帰ってきたら、しかりましたけどね」と笑った。昨春夏4強メンバー広部主将も「幸地は苦労も多かったけど練習していた。打ってくれてうれしい」と声を弾ませた。

 序盤は相手左腕のチェンジアップにタイミングが合わず凡打に終わっていたが、2巡目からは鍛治舎監督からの「逆方向へ」の指示で一気に大量得点を挙げての圧勝だった。「この勢いで優勝までいきたい」。インタビューが苦手そうな幸地も、最後はチームのスローガンをはっきりと口にしていた。【浦田由紀夫】

 ◆満塁本塁打 秀岳館・幸地が記録。今大会の高崎健康福祉大高崎・山下以来で通算24人目(25本目)。