第100回大会の記念事業として「甲子園レジェンド始球式」が大会期間中、毎日行われる。第15日の準決勝は第1試合にPL学園OBの桑田真澄さん、第2試合に東北OBの佐々木主浩さんが登板。始球式のボールは登板者のサイン入りで甲子園歴史館に展示される。

8月5日=松井秀喜(星稜)

1年夏、2年夏、3年春夏出場。3年夏の明徳義塾戦で5打席連続敬遠

母校星稜ナインをバックに投げ込んだが外角低めにワンバウンド。頭を抱え苦笑い。「夢のようです。やっぱり甲子園のマウンドは未経験なので、経験不足が露呈してしまった。『甲子園の魔物』に襲われたと思います」

星稜対藤蔭 始球式で投球する松井秀喜氏(撮影・白石智彦)
星稜対藤蔭 始球式で投球する松井秀喜氏(撮影・白石智彦)

8月6日=石井毅(箕島)

2年春夏、3年時は春夏連覇。3年夏星稜と延長18回死闘演じる

当時と同じアンダースローから外角低めいっぱいに見事なストライク。「届くんかなと思ったが、うまくいき過ぎた」。この試合の球審として見守ったのは星稜の元エースで石井さんと投げ合った堅田外司昭さん。「あの試合は財産。その時の相手と一緒にできて本当にうれしい」と石井さん。一方の堅田さんも「試合前から感動して、感謝して、うれしくて」と話した

山梨学院対高知商 レジェンド始球式で投球する石井氏(撮影・前田充)
山梨学院対高知商 レジェンド始球式で投球する石井氏(撮影・前田充)
元箕島エース石井毅氏(左)は始球式を終え元星稜のエース堅田外司昭球審にあいさつをする(撮影・奥田泰也)
元箕島エース石井毅氏(左)は始球式を終え元星稜のエース堅田外司昭球審にあいさつをする(撮影・奥田泰也)
星稜戦で力投する箕島・石井毅(1979年8月16日)
星稜戦で力投する箕島・石井毅(1979年8月16日)

8月7日=定岡正二(鹿児島実)

2年夏、3年夏は鹿児島県勢初の4強

大きくふりかぶって投じた1球は右打者の内角高めボールゾーンへ。「少し緊張しましたが、うれしかったです。(甲子園は)プロでは投げていますが、44年ぶりに幸せでした。甲子園に出た時の思い出や気持ちを感じました。軽く投げようと思っていましたが、捕手や打者がいて力が入りました。60歳を過ぎて、こういう機会を頂けるとは思っていなかったので、うれしいです」

佐賀商対高岡商 レジェンド始球式で投球する定岡正二氏(撮影・前田充)
佐賀商対高岡商 レジェンド始球式で投球する定岡正二氏(撮影・前田充)
佐賀商対高岡商 始球式をする定岡正二氏(撮影・奥田泰也)
佐賀商対高岡商 始球式をする定岡正二氏(撮影・奥田泰也)

8月8日=牛島和彦(浪商)

2年春、3年時は春夏出場し春は準優勝、夏は4強。ドカベン香川伸行氏(故人)とバッテリー

「抜けそうになって、引っかかってしまった」とワンバウンド投球に苦笑い。「(甲子園は)中日の時いらいですかね。だいぶ忘れてますね。キャッチャーが遠く見えますね。こんな感じだったかな? 久しぶりの感覚でしたね」と話した。「今回、始球式の話が出た時、生きていたら香川がキャッチャーかなと。もしくは香川が投げるのかな。投げるなら僕がキャッチャーかな」としみじみと語った

日南学園対丸亀城西 始球式をする牛島和彦氏(撮影・奥田泰也)
日南学園対丸亀城西 始球式をする牛島和彦氏(撮影・奥田泰也)
浪商・牛島和彦(左)は香川伸行と抱き合って喜ぶ(1979年8月)
浪商・牛島和彦(左)は香川伸行と抱き合って喜ぶ(1979年8月)

8月9日=平松政次(岡山東商)

3年春のセンバツで優勝、連覇を狙った夏は1回戦敗退

ワインドアップから山なりのボールを投じ、外角に見事なストライク。右手を挙げガッツポーズ!「奇跡に近いボールがいって、喜んでいます。毎日練習してきた外角低めにボールがいった。周りからは『カミソリシュートを投げるのか?』と言われたけど、今はそんな次元じゃないですから」と笑った

横浜対愛知産大三河 レジェンド始球式で投球後ガッツポーズする平松氏(撮影・滝沢徹郎)
横浜対愛知産大三河 レジェンド始球式で投球後ガッツポーズする平松氏(撮影・滝沢徹郎)

8月10日=谷繁元信(江の川)

2年夏、3年夏出場。3年時は8強

ワインドアップから外角低めいっぱいにストライク! 「投手の基本は、アウトコースですから。あそこに投げれば、早々長打を打たれません」と笑顔

木更津総合対敦賀気比 レジェンド始球式で投球する谷繁氏(撮影・滝沢徹郎)
木更津総合対敦賀気比 レジェンド始球式で投球する谷繁氏(撮影・滝沢徹郎)

8月11日=水野雄仁(池田)

2年夏、3年春に夏春連覇を達成。3年夏は準決勝でPL学園に敗れる

ワインドアップから緩~いボールで左打者の内角低めに見事なストライク! 「山の日」の登板に「『やまびこ打線』で『山の日』にしてくれたのかなと」と話し笑いを誘った。久しぶりの甲子園のマウンドには「変わらない夏でした。温かい声援を受けていたのを思い出しました」。「蔦さんがよく『人生は敗者復活戦』と言っていた。戦いのスピリットを持って立ち上がらないと、次の戦いは始まらない」と恩師である元池田監督の故蔦文也さんの言葉を引用し、敗れた球児にもエールを送った

鳥取城北対龍谷大平安 始球式を行う水野氏(撮影・垰建太)
鳥取城北対龍谷大平安 始球式を行う水野氏(撮影・垰建太)

8月12日=本間篤史(駒大苫小牧)

田中将大投手らと2年夏に甲子園連覇に貢献。3連覇を狙った3年夏は決勝再試合の末早実に敗れ準優勝。卒業後は亜大、JR北海道で活躍。昨年10月に現役を引退

ワインドアップから投じたボールは真ん中低め。ショートバウンドで捕手のミットに収まった。右膝を小さく折り曲げるフォームは3年夏の決勝戦で対戦した早実・斎藤佑樹投手(現日本ハム)にそっくり。事前に「投げ方をまねするから」と連絡すると、斎藤から「そこはハンカチでしょ」と返され「使っていいんだなと思った」と、投球直後にはハンカチで汗をぬぐった。「(現役時代の)決勝の時もすごかったですが、今日もたくさんの方がいて、決勝以上に緊張した。マウンドに立ったのは初めて。ここで投げていた田中将大はすごいなと思った」と話した

広陵対二松学舎大付 レジェンド始球式で投球する本間篤史氏(撮影・白石智彦)
広陵対二松学舎大付 レジェンド始球式で投球する本間篤史氏(撮影・白石智彦)
広陵対二松学舎大付 レジェンド始球式で投球後、ハンカチで顔を拭く本間篤史氏(撮影・白石智彦)
広陵対二松学舎大付 レジェンド始球式で投球後、ハンカチで顔を拭く本間篤史氏(撮影・白石智彦)

8月13日=坂本佳一(東邦)

1年夏に準優勝。「バンビ」のニックネームで人気者に

高めに抜けるボール球になってしまったが笑顔。大阪桐蔭先発の根尾投手と握手。登板後は「光栄です。自分の人生の原点が甲子園になりました」。甲子園で有名になったことで「野球を辞めた後でも、声をかけてくれる。その後押しが力になった」振り返った

始球式を行う坂本佳一氏(撮影・加藤哉)
始球式を行う坂本佳一氏(撮影・加藤哉)
沖学園対大阪桐蔭 レジェンド始球式を終え大阪桐蔭・根尾(左)と握手する坂本氏(撮影・滝沢徹郎)
沖学園対大阪桐蔭 レジェンド始球式を終え大阪桐蔭・根尾(左)と握手する坂本氏(撮影・滝沢徹郎)

8月14日=中西清起(高知商)

1年、2年春、3年春夏と4度出場。1年夏は準優勝、3年春は優勝投手

真ん中低めに速球を投げ込み見事なストライク! 「ホッとしている。ど真ん中に投げたかったが、力が入って、引っかけ気味になった」と自らの投球を解説。「最後の夏を1分でも長く楽しんで、戦ってほしい。僕もあの3年間があるから、ここまで来られた。私の原点です」と球児にエールを送った

日南学園対常葉大菊川 レジェンド始球式に登場した中西清起氏(撮影・横山健太)
日南学園対常葉大菊川 レジェンド始球式に登場した中西清起氏(撮影・横山健太)

8月15日=安仁屋宗八(沖縄)

3年夏、南九州大会を勝ち抜き出場。1回戦敗退

ワインドアップから外角高めに力強い1球を投げ込んだ。2日後の17日に74歳の誕生日を迎えるとは思えない投球にスタンドから拍手が起こった。「終戦の日」の登板に「100回大会を迎えられて、日本が平和じゃないと続くことじゃない。日本が平和だから続いたこと。戦争というのは2度と起きてはいけない。終戦の日に始球式をさせてもらえることは、幸せの1ページ。一生の思い出です」と平和を願った

下関国際対創志学園 レンジェンド始球式に登場した沖縄OBの安仁屋宗八氏(撮影・浅見桂子)
下関国際対創志学園 レンジェンド始球式に登場した沖縄OBの安仁屋宗八氏(撮影・浅見桂子)

8月16日=板東英二(徳島商)

3年夏に準優勝。準々決勝の魚津戦で延長18回引き分け再試合。25奪三振の大会記録。大会通算83奪三振も大会記録として残る

大きくふりかぶって投じた1球は、ショートバウンドで捕手のミットに収まった。報徳学園の捕手、投手と笑顔で会話。「悔いを残すなよ」と助言し、名残惜しそうにマウンドを降りた。「(甲子園は)やっぱり雰囲気が違いますね、高校野球は。いいですねぇ」と笑顔。「人生の糧を得られる。負けても、それを生かせる。机上で学ぶことはできませんから」

始球式で見事な投球を披露する板東英二氏(撮影・梅根麻紀)
始球式で見事な投球を披露する板東英二氏(撮影・梅根麻紀)

8月17日=金村義明(報徳学園)

3年時に春夏出場し夏に全国制覇

ワインドアップからの投球は、ワンバウンドで大きく左へ外れた。近江の有馬諒捕手(2年)が、横跳びでキャッチ。「お恥ずかしい。ど真ん中に120キロ直球を投げようという気持ちがありましたが、体が言うことをきかなかった。近江の有馬捕手のナイスキャッチに、感謝です。今の高校生のレベルの高さに驚きました」と振り返った

常葉菊川対近江 始球式を務めた金村義明氏(撮影・浅見桂子)
常葉菊川対近江 始球式を務めた金村義明氏(撮影・浅見桂子)

8月18日=中西太(高松一)

「怪童」と呼ばれ3度出場

一塁側室内で行ったピッチング練習ではまったくの不調だったが、見事なノーバウンド投球を披露して万雷の拍手を浴びた。マウンドを降りた後は「わたしは本番に強いんだよ」と周囲を安堵(あんど)させながら笑わせた

大阪桐蔭対浦和学院 始球式を行った中西太氏(撮影・宇治久裕)
大阪桐蔭対浦和学院 始球式を行った中西太氏(撮影・宇治久裕)

8月20日・第1試合=桑田真澄(PL学園)

1年夏から5季連続出場し1年夏と3年夏に優勝。甲子園通算20勝

スパイクを履いて投じた1球は外角高めに見事な直球。「1週間前からワクワクしていた。ここで3年間、自分を育ててもらったことを感じ、感謝の気持ちで投げました。やはりここはスパイクを履いて投げないといけないと思った」と振り返った。金足農のエース吉田輝星投手(3年)について「自分も大阪大会5連投、甲子園4連投の経験はあるが、どこか痛いところがあれば休んでほしい」と助言し「高校野球でもどんどん改革することが必要で、球数制限をした方がいいと思っています」と持論を展開していた

金足農対日大三 始球式で往年の投球フォームから力強いボールを投げ込む桑田真澄氏(撮影・宇治久裕)
金足農対日大三 始球式で往年の投球フォームから力強いボールを投げ込む桑田真澄氏(撮影・宇治久裕)

8月20日・第2試合=佐々木主浩(東北)

2年夏から3季連続出場。3年時は春夏ともに8強

セットポジションから左打者の内角高めに見事なストライク。フォークボールではなく力強い直球だった

済美対大阪桐蔭 始球式を行う佐々木主浩氏(撮影・宇治久裕)
済美対大阪桐蔭 始球式を行う佐々木主浩氏(撮影・宇治久裕)

8月21日=太田幸司(三沢)井上明(松山商)

3年夏の甲子園決勝で投げ合う。延長18回、0-0で引き分け。再試合は4-2で松山商が勝利した

松山商対三沢 決勝戦引き分け再試合で力投する三沢・太田幸司(1969年8月)
松山商対三沢 決勝戦引き分け再試合で力投する三沢・太田幸司(1969年8月)
三沢対松山商 球史に残る延長18回引き分けの試合で力投する松山商の井上明 (1969年8月18日)
三沢対松山商 球史に残る延長18回引き分けの試合で力投する松山商の井上明 (1969年8月18日)

※18日の準々決勝までは第1試合で実施。19日は休養日で試合無し。敬称略、()内は出場当時の学校名