<高校野球・春季北海道大会:立命館慶祥7-2北照>◇6日◇決勝◇札幌円山

 立命館慶祥が北照を7-2で下し、創部70年目にして、春夏秋の3季を通じ初の全道制覇をなし遂げた。工藤悠河(3年)が、北照打線を6安打2失点に抑える粘りの投球で完投。札幌地区予選から7試合を、1人で投げ抜いた。打線も北照3投手に12安打を浴びせ7得点と、奮闘するエースを援護した。96年に就任した横山蔵人監督(48)は、14年目にして栄冠を手中にした。

 北照最後の打者、五十嵐を三振に取ると、工藤は右こぶしを握り、一塁側の応援席に向かって、2度ガッツポーズをした。前日5日に続く連投は、札幌地区予選から7試合目の登板。「5回ぐらいから握力が落ちてきた」と7-0の6回、2四球と2安打などで2点を失った。しかし失点はこの回だけ。春4度目の優勝を狙った北照を寄せ付けず、初めて北海道の頂点に立った。

 初戦の函館大有斗戦が2点、準決勝駒大岩見沢戦が1点と、全道に入ってからは少ない得点を守り切る野球をみせてきた。決勝では一転、攻撃力の高さも示した。4回1死一、三塁から、工藤が左中間へ二塁打を放ち2点を先制。6回には2四球に4安打と集中攻撃で5点を追加し、試合を決めた。

 昨秋のコールド負けが栄冠へのきっかけだった。翌朝から練習を再開、横山監督は「コールド負けから甲子園に行き、新しい伝説を作ろう」と選手の気持ちを奮い立たせた。冬場は1人1日1000回、多い選手は2000回以上、素振りした。単調な練習に緩みが出ると、古川優主将(3年)らが率先し、練習態度だけでなく、用具準備、掃除など「背中」でチームを引っ張った。

 成果は表れた。4月29日に臨んだ練習試合、秋にコールド負けを喫した恵庭南に4-2で勝った。相手の工藤高司監督(50)が「スイングの速さが秋と全然違った」と話すほど、レベルは上がっていた。屈辱が、全道優勝への原動力となった。

 初優勝を飾った札幌円山のグラウンドで行われたインタビュー。工藤はボソボソとした口調ながら「苦しいときがあったが皆が助けてくれた。夏も勝って甲子園にいきたい」と誓いを立てた。21日には夏の札幌地区予選が開幕する。勢いを持って、新たな歴史を築きにいく。【中尾猛】