超高校級の打撃で“森野2世”の異名を取るのが、東海大甲府(山梨)の高橋周平内野手(3年)だ。高橋はヤクルトや阪神など複数球団がドラフト1位候補に挙げる高校生NO・1野手。最後の夏を前に高校通算本塁打を70本の大台に乗せた。今日9日、25以上の都府県で地方大会が幕を開け、球児たちの夏がいよいよ本格化する。

 目を閉じても高橋だと分かる。強いパワーと正確なミート。フリー打撃で1人だけ音が違うのだ。「苦手なコースも球種もないんです」。東海大甲府グラウンドには右翼ネット後方30メートル地点に“高橋ネット”が設置されている。村中秀人監督(52)が「130メートル以上飛ばないと越えない」という特設ネットすらも越え、タクシーに2度打球をぶつけたという左の大砲だ。

 予想を上回るスピードで成長してきた。2年秋までで45本塁打。在学中の目標は60本に決めた。ところが2日、1試合2発を放った横浜との練習試合で70号に到達した。「自分は打率重視の中距離ヒッター。1発は狙いません」。打球はほとんどライナー。ヒッティングゾーンも広い。69本目は首ほどの高さの内角直球を軽々と100メートル先まで運んだ。高橋にとって本塁打は“飛びすぎた二塁打”にすぎないのだ。

 日米14球団が熱視線を送り、その複数がドラフト1位候補に挙げる。東海大相模時代に中日森野を育てた村中監督は「守備も足もスイングスピードも、周平が上」と太鼓判だ。そんな高橋は今春から森野と同じ3番を任された。3月には、オープン戦で山梨を訪れた森野のティー打撃を見る機会があった。熱心に見入り、無言のエールを受け取った。

 主将の責任感もある。センバツでは兄弟校の東海大相模が優勝。村中監督に「次は甲府の番だ」と言われ「ハイ」とうなずいた。1年夏、2年夏ともに、負けた試合で最後の打者になった。マークは厳しくなるが「3年連続はないと思う。問題ないです」。ただ、最後まで勝ち続ければいい。初の甲子園へ。表情には自信がみなぎっていた。【鎌田良美】

 ◆高橋周平(たかはし・しゅうへい)1994年(平6)1月18日、神奈川・藤沢市生まれ。小1で投手として野球を始める。善行中2年時に、湘南クラブボーイズの4番三塁で全国制覇。東海大甲府では1年春に5番、同夏から4番。今春から3番で県大会優勝、関東大会8強。家族は両親と兄、姉。180センチ、83キロ。右投げ左打ち。