<高校野球西東京大会:早実10-0松が谷>◇16日◇2回戦

 ポスト「佑ちゃん」は「聖ちゃん」だ。昨夏の西東京を制した早実が、エース内田聖人(きよひと)投手(3年)の好投で松が谷に6回コールド勝ちし、3回戦に進出した。右腕から伸びのある直球を武器に力で押し、6回2安打無失点で今夏初登板を飾った。06年の斎藤佑樹投手(23=早大-日本ハム)らの全国制覇を見て、早実進学。佑ちゃんばりのポーカーフェースで投げ抜いた。

 栄光の背番号1は、表情を変えることなく淡々と投げ続けた。1回、松が谷の攻撃をわずか4球で終わらせ、内田の最後の夏が始まった。3回まではパーフェクト。それでも、肩に力が入ることはない。「記録は考えてなかった。むしろ早く(相手に)1本が出ないかなと思っていました」。常人とは逆の意識を持つあたり、今年のエースもただ者ではない。6回を2安打、5奪三振。「浮つくというより、いい緊張感。普通に投げることを目標にしました」と涼しげだった。

 斎藤の系譜を継ぐ男は、境遇もそっくりだ。06年に全国制覇した早実に憧れ、静岡・伊東市から上京。兄寛人(かんと)さん(19)と、今は都内で2人で暮らす。「疲れているときは、兄が炊事や洗濯をやってくれます」。群馬から上京し、兄の支えで大成した斎藤と同じように、親元を離れて野球に打ち込んでいる。

 早実の背番号1。荒木大輔や斎藤ら、甲子園のアイドルが付けた番号を背負う。「斎藤さんとか、過去にすごい選手はいるけど、自分は自分を貫きたい」。軸はブレないが、昨秋には斎藤流トレーニングを導入した。斎藤から和泉実監督(49)づてに聞いた練習法で、捕手を30メートル先に座らせ、平地で投球練習するというもの。マウンドの傾斜を使えないため、ストライクを投げるには体全体を使うことが必要になる。これで、自然と重心移動を意識するようになった。その成果か、5月の掛川西(静岡)戦では最速148キロを記録した。

 ポーカーフェースも佑ちゃんばり…かと思いきや、意外な選手の名前が出てきた。「(06年に)斎藤さんと甲子園の決勝で投げ合った駒大苫小牧の田中さん(将大、現楽天)が、流れが悪いのに表情をまったく変えなかったんです。それを見て、自分も変えないようにしています」。好投手たちの要素をいいとこ取りをした「聖ちゃん」が、2年連続の甲子園へ突っ走る。【森本隆】