史上初の甲子園3連覇は、ミラクル二刀流でつかみ取る!

 第85回選抜高校野球大会(3月22日開幕、甲子園)の出場校を決める選考委員会が25日、大阪市内で開かれ、昨年史上7校目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭の、2年連続6度目の出場が決まった。主力投手の1人が右足骨折で離脱中で、今秋ドラフトの目玉・森友哉捕手(2年)が投手との二刀流でフル回転する。東北からは21世紀枠のいわき海星(福島)を含む史上最多5校が選ばれた。組み合わせ抽選は3月15日に行われる。

 2000人を超える全校生徒の前で、森は高らかに告げた。「主将の森です。春、夏、春の連覇をするスタートラインにようやく立てたので、これから甲子園までの期間、日本一を目指して頑張ります!」。熱い宣言に、卒業生の席に座った3年の春夏連覇メンバーから声が上がった。今日26日の卒業式の予行演習で、センバツ出場が発表された。

 秘策中の秘策が準備された。阪神、巨人が狙うドラフトの目玉捕手である森が、甲子園で初めてマウンドに立つかもしれない。今月3日、葛川知哉投手(2年)が右足甲を骨折した。葛川は背番号1の高西涼太投手(同)と並ぶ主力投手で、前エースの阪神藤浪晋太郎(18)が「打者からすれば、見にくい。打ちづらい投手だと思う」と自身の後継者に指名した右腕だった。同7日に骨折が判明し、15日にボルト固定の手術を受けた。この日も松葉づえをついての参加。懸命に復帰への努力を続けているが、3月22日の開幕に間に合わない可能性が高い。

 この危機におとこ気を見せたのが、森だった。葛川の負傷発覚直後から、捕手のかたわら、チームの打撃練習でマウンドに立ち始めた。庭代台小時代は投手。「いざとなれば、自分が投げます」と西谷浩一監督(43)に告げ、久米健夫捕手(2年)を相手にシュート、スライダーを投げる練習も始めた。「おそらく本気だと思います」と西谷監督も主将の気持ちをくむ。日本ハム大谷が投手兼野手の二刀流に挑戦しているが、投手兼捕手となれば超異例だ。

 昨年は2年生ながら藤浪とバッテリーを組み、史上7校目の春夏連覇を達成した。甲子園で3発を放ち、今春は3番を任される。西谷監督は「球を捉える技術だけなら中村剛也、西岡、中田らに並んでいます」とプロで活躍するOBを引き合いに出して絶賛する。打撃だけでも大きな期待がかかるが、さらなる重圧を背負うことになる。それでも森はすべてを受け止め「頑張ります」と笑った。池田(徳島)もPL学園(大阪)も横浜(神奈川)も届かなかった3季連続の戴冠へ、大黒柱の心意気が大阪桐蔭の力になる。【堀まどか】

 ◆森友哉(もり・ともや)1995年(平7)8月8日、大阪府生まれ。5歳から庭代台ビクトリーで野球を始める。小6の時にオリックスジュニアの捕手兼投手として12球団ジュニアトーナメント優勝。中学では堺ビッグボーイズ所属。大阪桐蔭では1年秋からベンチ入りし、2年春夏には藤浪とバッテリーを組み甲子園連覇。甲子園通算10試合で38打数16安打(打率4割2分1厘)、3本塁打、4打点。高校日本代表でも正捕手を務めた。高校通算23本塁打。50メートル走6秒2。遠投100メートル。170センチ、80キロ。右投げ左打ち。

 ◆捕手の二刀流

 最近の甲子園では98年夏に滑川(西埼玉)の久保田智之(現阪神)が「背番号2のトルネード守護神」として3試合に救援登板した。99年夏には県岐阜商の4番竹中慎之介が智弁学園戦で捕手から登板し6回1/3を無失点。09年夏には大会70年ぶりに出場した関西学院(兵庫)の山崎裕貴が、165センチ、55キロの体で大車輪。捕手から登板して1回戦の酒田南戦で勝ち投手になり、2回戦の中京大中京戦では捕→投→捕→投とマウンドに2度上がって河合にサヨナラ本塁打を浴びた。